社会における、より良い自社の在り方を考えるにあたり、スポーツ・スポンサーシップを、今どのように活用できるのか。今回はバーチャルサイクリングに迫ります。
2年にわたるパンデミックにおいて、最も急成長したスポーツ市場はバーチャルスポーツといっても過言ではありません。バーチャルスポーツは「電子機器を用いてオンラインで競う娯楽的な身体活動」と定義され*1、中でもバーチャルサイクリング*2はオリンピック・バーチャルシリーズでの採用など注目を集めています。
*1 山口志郎(2021)バーチャルスポーツの今後の可能性. 神戸スポーツ産業懇話会第10回特別公開セミナー講演資料.
*2 バーチャルサイクリングは屋内にロードバイクを設置し、ロードバイクに取り付けた各種センサー(例:後輪に取り付けるスマートトレーナー)から取得した情報をパソコンやスマートフォンのアプリケーションと連携させることで、走行が可能となります。
現在著者は在外研究の機会を得て、ベルギーのブリュッセル自由大学にてバーチャルサイクリングの研究をしています。ベルギーは、隣国オランダと共に世界屈指の自転車大国として知られています。サイクリングレースはベルギーの国技で、フランデレン地域で開催するロンド・ファン・フランデレン、通称ツール・ド・フランダースは、世界中から愛されるクラシックレースのひとつです。
レースをバーチャル化
ツール・ド・フランダースは、コロナの影響で大会開催が危ぶまれる中、2020年4月5日に欧州でいち早くプロ選手を対象としたバーチャルサイクリングレース「デ・ロンド/ザ・ロックダウン・エディション」を開催しました。主催者のフランダース・クラシックスは、パートナー企業と協働でコースの最後の32kmをバーチャル化し、13人のプロ選手が自宅からレースに参加できる仕組みを構築しました。
このバーチャルレースは、ベルギー国内で約61万人(市場シェア56%)の人々がテレビ放送を...