前回に続いて2021年6月に全国の国公立大学の広報担当部署に対して行った広報に関するアンケート調査(以下、2021年調査)を取り上げます。前回は調査の背景や内容について説明しました。今回は2012年文科省調査と2016年調査との比較を行いながら「国公立大学広報の今」を考えます。
大学広報の役割と位置づけ
はじめに広報担当部署の業務範囲です(図表1)。これについては、「入試広報以外の広報業務を担当」「学生募集に関する広報(入試広報)も含めた広報業務全般」「広報専門の部署はなく、総務や企画担当部署が広報業務も担当」の3つの選択肢で質問しました。国立大学の広報担当部署の多くは、入試広報以外の大学全体の広報を専門とすることが定着していると思われます。一方、公立大学の2021年の結果は、2012年の水準に近い数値となりました。

図表1 国公立大学における広報専門部署の設置状況の推移
*1 2012年文科省調査は、文部科学省「大学等の広報に関するアンケート調査結果」(2012年10月)から引用。
*2 2012年文科省調査には「入試広報も含めた大学広報」か「総務や企画担当部署が兼務」かの内訳はない。
出所/筆者作成
さらに2016年調査と2021年調査両方に回答した21大学に限定して比較したところ、「入試広報も含めた広報業務全般」はいずれも23.8%、「入試広報以外の広報業務を担当」は2016年より19ポイント低下となる14.3%、「広報専門の部署はなく、総務や企画担当部署が広報業務も担当」が19ポイント上昇の61.9%という結果でした(図表2)。2014年のガバナンス改革に伴う高度専門職の議論を受け広報専門部署の設置が進んだものの、直近では再び総務や企画との関係を深め、元に戻したようにみえます。
出所/筆者作成
この質問に関連してもうひとつ、広報担当部署の大学における位置づけも尋ねています。2012年、2016年、2021年いずれも同じ内容を聞いており、それをまとめたのが図表3です。