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大学広報ゼミナール

国公立大学アンケート 研究背景と調査内容

谷ノ内 識(追手門学院大学)

2021年の個人研究は主に国立大学の広報活動の現状分析を研究テーマに設定しました。日本広報学会から研究助成を受け、2021年6月から7月末にかけてアンケート調査を実施しました。国公立大学の広報担当者の皆様にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

分析の詳細は10月に開かれる日本広報学会の研究発表全国大会で報告予定ですが、ここでは研究テーマの背景や調査結果の一部から興味深く思った点について速報的にまとめます。

専門性のある広報人材への必要性

研究の背景ですが、これも本連載で何度か引用している文部科学省の諮問機関の中央教育審議会大学分科会が2014年2月にまとめた「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)で、専門性のある広報人材の必要性と登用の検討が盛り込まれたことです。

特に国立大学においては前年の2013年11月にも「国立大学改革プラン」が出され、2016年度から6年間の中期計画において、「大学のガバナンス改革の推進について」と関連する学長を補佐するための高度専門職の創設が盛り込まれました。国立大学では専門的知見に基づいた広報活動が進むものと考えました。

また国立大学は私立大学のような定員割れの危険性が少なく学生募集のための入試広報よりも、教育・研究を通じた社会貢献や人材育成の成果を発信し、社会的評価を高め社会全体に必要と認識される「大学広報」を重視することが、筆者の先行研究などからも分かっており、より正確な分析ができると考えました。

さらに国立大学は先に挙げた6年間の中期計画を中期目標と合わせて文部科学省が示した基本項目に沿って公表しており、広報活動に関する項目について比較がしやすいこともあります。

そして筆者独自の強みとして本連載でも引用している2012年に文部科学省が実施した「大学等の広報に関するアンケート調査」(以下、2012年文科省調査)、2016年に筆者が実施した「大学における理念の効果と浸透策に関するアンケート調査」(以下、2016年調査)という全国の国公私立大学の広報活動について調べたデータがあり、今回これらと調査項目を合わせることで経年変化を確認することができます。

以上の点からリサーチクエスチョンをまとめると「国(公)立大学における大学広報は、どのように進んでいるのか?」です。

広報担当部署、明示化の流れ

分析対象は大学院大学を含む国立大学86校と、比較対象として専門職大学を含む公立大学94校とし、私立大学は含めず、今後の課題としました。本当は含めたかったのですが研究助成だけでは研究費を賄いきれず断念しました。

各大学にアンケートを送るのに必要な送付リストを作成した際、2016年調査と比べると気づかされる点がありました。国立大学の場合...

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