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大学広報ゼミナール

学内とメディアをつなぐ 大学広報の役割とは

谷ノ内 識(追手門学院大学)

2021年7月上旬、教育担当として国立大学を取材しているという、東日本のある地方新聞の社会部の記者から筆者宛てに相談のメールがありました。

「学長が替わってから非常に報道対応が厳しくなり、取材に困難をきたしている。取材の可否の判断から回答内容まですべて学長チェックが必要で、緊急性や公益性が高い取材であってもその日のうちに取材ができないこともある。大学広報のあり方について考えを聞きたい」という内容でした。筆者はメールを確認後すぐに記者に電話し直接話を聞きました。「新聞社としても大学の広報対応を問題視しており記事化も検討している」ということで、このままいくと一触即発の危険すら感じました。

新聞社と大学広報の関係性

全く関わりのない遠方の大学と、地方新聞社の話ということもあり「一般論にはなりますが」と前置きした上で「私も記者時代に同じ経験をしたことがあり、それが今につながっているのですが、主に2つのパターンがあります。ひとつは広報担当者の業務遂行能力に問題がある場合。もうひとつは学長(経営層)の広報に対する理解と広報の基本業務であるメディア対応のイメージと取材するメディア側との間にギャップがある場合です」と答えました。記者からは「広報担当者には問題なさそうなんですが」とのことでした。

その地域を代表する大学トップ自らが地域世論の形成をけん引する地方新聞社との関係で「無意識的なのか意識的なのか」、結果的に不信感を深めてしまっているように受け止めました。筆者からは「記事化の前に新聞社としてもしくは記者クラブとして大学側と懇談や意見交換の場を設けたらどうですか?無意識でこうなっているのなら広報の重要性を理解してもらう必要があるし、意識的だというのならなぜそうなのか、背景を確認して改善策を話し合うしかないのでは」と提案しました。

その後ホームページで公表している6年間の中期計画と2021年の年度計画を確認すると、「積極的に広報活動に取り組む」ことは明記されているものの、本連載26回目でも取り上げた、何をもって成果を評価するのかの指標となる(数値)基準や目標値が盛り込まれていませんでした。これだと積極的に広報活動に取り組んだかは、当該部署の事業報告に対して客観的に評価できず感覚的もしくは報告をそのまま認めるといったことにもなりかねません。

もし成果指標と目標値が示されているのなら、メディア対応を強化して記事露出を増やすことは積極的な広報活動につながることであり、取材そのものが困難を...

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