メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は東洋大学の薗部靖史ゼミです。
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設立 | 2015年 |
学生数 | 3年生13人、4年生14人 |
OB/OGの主な就職先 | マテリアル、シースリーフィルム、ビデオリサーチ、DAZN、時事通信社、東日本電信電話、積水ハウス、ブルボン、みずほフィナンシャルグループ、特許庁など |
東洋大学社会学部のメディアコミュニケーション学科は、座学(理論)と実践の融合で、メディア学、文章術、映像制作、プログラミング他、メディア・IT業界で即戦力として活躍できる知識、技術を身に付けるプログラムが豊富に用意されている。2022年からは「メディア体感プロダクション」と題し、新聞、テレビ、雑誌各媒体の実務者を講師とした特別プログラムも設ける予定で、幅広い教育の機会を提供している。
マーケティング・コミュニケーションを専門にする薗部靖史教授のゼミでは、その「理論」と「実践」のバランスを意識しているという。「新しいことをするときでも、多くの場合、ヒントは文献や理論の中にあります。共通する法則のようなものです。その基礎があれば、アイデアは掛け合わせ次第で生まれていきます」。
企業活動の中でも「コミュニケーション」に特化する薗部ゼミ。宣伝やメディア対応からリスクマネジメントなど、組織の攻守、両方のコミュニケーションを学ぶことができるのが特徴だ。
「商学部や経営学部で学ぶことが多い分野ですが、ここでは適用範囲を企業だけではなく自治体や一般生活者にまで広げています。誰も『コミュニケーション』を避けることはできません。社会の中での組織(自分)の評価・価値をいかに高められるか。様々な角度から客観的に考える力を、身に付けてもらいたいと思っています。社会に出てから活躍できる人材になるためにも必要なスキルです」。
広告・PRの課題に挑戦!
3年生の春学期は、マーケティングの、コミュニケーションや広報・PRの立ち位置を学ぶ座学中心の活動だ。活用するテキストは『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント基本編 第3版』(丸善出版、2014)、『現代広告論〔第3版〕』(有斐閣、2017)、『広報・PR論─パブリック・リレーションズの理論と実践』(有斐閣、2014)の3冊。学生らが順番で輪読し、要約やディスカッションで理解を深めていく。
秋学期は、広告・PR業界の実務者に毎年依頼し、PRや広告を含むマーケティング・コミュニケーションに関する課題を出してもらい、学生らで戦略を立て、プレゼンを行う。2020年度はマテリアル 田代順氏、2021年は日清オイリオグループから講師を招聘。春学期に得た「理論」を活かし、1カ月間の準備を経て、グループごとに発表。課題提出者、薗部教授が評価する。
「ゼミを通じて、自分の好きなことと向き合ってほしい」と薗部教授。実際、4年生の卒論/ゼミ論は学生の興味を尊重して、その取り扱うテーマは幅広い。映画への感情移入度とプロダクトプレイスメントの効果の関係やアイドル事務所のキャラ設定戦略など、まずは興味のあることから研究を進めていく。
「映画やアイドル事務所もそうですが、仕掛けたことに対して、受け手側にポジティブに捉えてもらうにはどうすればよいか。そのコミュニケーションにこそ、分析・工夫が必要です。自分にとって身近なテーマであれば、より面白いです。その楽しさをゼミを通して感じてもらえればと思います」。
広報・PR研究の裾野を広げ 専門家の育成へ
マーケティングの中でも、コミュニケーション領域を専門とする薗部靖史教授。「幼少期からテレビが大好きで、生活の中に当たり前にありました。私の場合、メディアを通したコミュニケーションから興味を持ち、大学で広告のゼミに入りマーケティングを学んでいった形です。企業のアクションに対して人々がどう反応するか。反応のネガティブ、ポジティブは、メディアでの発信と連動していて、そこを紐解く面白さを感じました」。
しかし、広告に比べ日本では広報の学術的専門家や教育の場がまだ少ないという。
「米国などの海外に比べ、裾野はまだまだ広くありません。SNSなど発達する中、学生たちの興味が組織のコミュニケーション領域に向いているのにもかかわらず、そこの受け皿が足りていません。専門家としてこの領域を確立させていきたいです」。