メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は目白大学の石川 透ゼミです。
DATA | |
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設立 | 2018年 |
学生数 | 2年生10人、3年生12人、4年生10人 |
OB/OGの主な就職先 | 広告、映像制作、デザイン制作、イベント、ウェブ企画、コンサルティング会社など |
目白大学 メディア学部は、2018年に社会学部から独立し設置された。メディア、広告、ジャーナリズム、放送、サブカルチャーなど、幅広い実務経験を持つ教員を多く擁し、「実社会とつながる」ことを目標に、地域とのコミュニケーションや外部のコンペティションへの参加など、学びの中で大学外との接点が多いのが特徴だ。またデザイン、プログラミングなど技術的なスキルも合わせて身に付けることができる。
過去の広告に触れる機会を
今回話を聞いた石川 透特任准教授のゼミ室も、主に広告制作の外部のコンペティション、アワードへの参加を活動の軸としている。しかしまず2年生の秋からは、歴史的な名作から最新の作品まで、とにかく様々な広告を見ることから始める。
「私がまとめたCM集を、適宜コメントを挟みつつ一気見してもらったりと、最初はとにかくインプットをしてもらいます。今の学生は広告への興味の入口が多様化し、みんながテレビCMを見ているわけではなくなったと感じます。最終的にはコンペに応募する実際の広告作品をつくるのがゴールですが、過去作品を見ることは、その出発点です」。アドミュージアム東京(汐留)で学芸員から解説してもらいつつ、広告の歴史を江戸時代から学ぶ機会なども設け、広告を文化的にも理解していく。
その次のステップが、コピーを考えること。もともとコピーライター出身の石川准教授。「例えば、『ネットで簡単に映画が見られる時代に、映画館に行きたくなるコピー』というお題を投げかけ、取り組んでもらいます。言葉の発見は課題解決の切り口です。学生同士でディスカッションしつつ、アイデアの精度を高めていきます」。
外部コンペで準グランプリ受賞!
3年生の春からは、実際に学外のコンペに参加。乳がんの早期発見の大切さを伝え、検診受診を呼びかける作品を募集する「ピンクリボンデザイン大賞」、日本広告学会が2020年から始めた、課題の設定から自身で行う「学生広告クリエーティブ賞」などに参加。なかでも毎年力を入れているのが「ACジャパン広告学生賞」。3年生の秋からそれに向けてチームを分け、企画を練っていく。2020年度は「食品ロス」をテーマにした作品で、新聞広告部門で準グランプリを受賞した。
「タイトルは『#完食』。最近食事を写真に撮ってSNSに投稿する若者が多いことに着目し、完食した後も写真を撮ってアップしようよ、と呼びかけて、間接的に食品ロスに貢献するというアイデアです。若い学生の世代らしい発想だと思いました。食品ロス削減をポジティブにとらえられるように、うまく工夫されている点を評価いただきました」。
ゼミの活動を通して広告をつくる面白さと厳しさを経験してもらいたいと石川准教授。「何かと自分の意見に閉じこもりがちな学生が多いように感じます。様々な人の違う考えをぶつけ合うからこそ、面白いアイデアが生まれることを経験してもらいたいです。そして最後は自分たちの作品に愛を持って、ディテールをどれだけ追求できるか。確かにそこは根気がいる作業ですが、何かを生み出す大変さを分かることが、社会に出たときの糧になると思います」。
リスクにおびえる学生たちに自由に表現できる場を
石川 透准教授は、元電通でコピーライター、クリエイティブディレクターとして活躍。電通時代の先輩から頼まれ1コマの非常勤講師から大学教員への道に足を踏み入れた。
「会社で仕事していると、若い人と接する機会はなかなかないんですよね。テレビを見ない世代、と私も調査で知識としては知っていましたが、目の前にいる学生たちから直接言われるとすごくリアルに感じます」。
また、石川准教授はこれから若者たちが自由に表現できる場をつくっていきたいと話す。「SNSで自己表現するのが上手い若い人も、あまりに他者と簡単につながれるので、リスクを感じ、表現を制限するようになってしまったと感じます。もっと自由に発言・表現してよい機会をゼミでもつくっていければいいなと感じています」。