メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は同志社大学の竹内幸絵ゼミです。
DATA | |
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設立 | 2014年 |
学生数 | 3年生16人、4年生1人(2020年度サバティカルのため担当せず) |
OB/OGの主な就職先 | テレビ朝日、メンバーズ、電通ライブ、バンダイ、アサヒビール、キリン、パナソニック、日立製作所、全日本空輸 |
同志社大学 社会学部 メディア学科で教鞭をとる竹内幸絵教授のゼミ室では、教授の専門である広告デザインをもとに、その広告・コミュニケーションがなぜ受け入れられ、評価されたのかを分析している。
情報の操作に気づく力を
竹内教授はゼミの活動を通して、学生たちが知らず知らずのうちにビジュアル情報から多くの情報を受け取っている事実に気づいてほしいと話す。
「例えばLINEのスタンプひとつとっても、ビジュアル情報を発信するコミュニケーションです。SNSで画像を受発信することが当たり前になっている学生たちは、その情報に自身がどれだけ影響を受けているのかに気づいていません。歴史をさかのぼり、広告デザインに影響を受けてきた背景を知ることで、受け身にならないリテラシーを獲得してもらいたいと思っています」。
人気コンテンツを分析
3年次から始まるゼミは、数人のグループに分かれてテーマごとに研究を進めています。「この時代の広告はなぜ写真を使ったのか」など過去の広告の「なぜ」を歴史文献から分析し、「それにより人々はどんな印象を与えられていたか」、そしてその先にある「その時代の社会は何を求めていたのか」までを追っていく。
4年次には卒業論文として、ひとり1テーマを選出。直近では『なぜ「劇場版名探偵コナン」は人気なのかー映画の枠を超えた謎に迫るー』と題し、人気アニメ映画が近年興行収入を継続的に獲得しているわけを、PRポスターのアニメキャラ配置で分析したり、『男性アイドルに「関係性の良さ」を求めるようになった時代背景』というテーマで、アイドルグループ嵐を研究対象に、雑誌などでの掲載ポジションのセンター率がメンバー全員ほぼ均等なこと、これとグループ人気の相関関係を立証した論もあった。
「紹介した通り、人気コンテンツの“なぜ?”に迫る論も多いです。一見すると広告デザインや歴史とは無関係な疑問ですが、今や世の中のすべてが広告になりうる時代です。自分の興味のあるコンテンツの歴史や変遷をたどり、社会はそのコンテンツによりどのように影響されているのかを知ることは、先に話したリテラシーの話とつながっているのです」。
近隣の広告ゼミと実践的活動も
竹内ゼミでは、3年次にさらに近隣の関西学院大学、立命館大学、関西大学、京都産業大学などの広告・広報ゼミと共同ゼミも行っている。
同じ課題に関し、コミュニケーションプランを各自作成しプレゼンをし合う取り組みだ。7月くらいにテーマが発表され、10月ごろには発表なため、夏季休暇も返上して、プラン作成にあたる。「通常のゼミでは、研究・分析がメインですが、この合同ゼミではプラン作成という実務も経験できます。どちらも経験できるのが、私のゼミの最大の特徴だと思います」。
企業ミュージアムで広告ビジュアルの歴史研究に魅力
竹内幸絵教授は大学卒業後、総合職としてサントリーに入社。大阪のサントリーミュージアム初期メンバーとして関わり、学芸員として活動した。
その際、収蔵していた西欧19世紀末のポスターの美しさと大きさにじかに触れ驚いたが、それらを同時代に見た大正期の日本人の驚きの声が載った記事を発見。
自身も共感し、面白さを感じ広告史研究に向かうこととなった。
今後は昭和期の広告史研究を進めたいと竹内教授。「例えば、CMが出始めた頃は生放送だったのを知っていますか?それがなぜタレントやアニメキャラなどを起用した定型のコンテンツになっていったのか。社会の流れと見比べ、時代ごとの人々の心の動きを、広告を通して押さえていきたい」と話す。