メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は中京大学の宮内美穂ゼミです。
DATA | |
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設立 | 2006年 |
学生数 | 2年生13人、3年生8人、4年生8人 |
OB/OGの主な就職先 | アストラゼネカ、サイバーエージェント、新明和工業、積水ハウス、凸版印刷、日本ハム、日本航空、三菱自動車工業、森永製菓、ルイ・ヴィトン ジャパン |
中京大学 総合政策学部は一般的な“ゼミ”といわれる少人数制演習型から、より能動性を意識し、実際の企業や自治体の課題解決に取り組む「プロジェクト研究」を2年次から4年次まで行っている。
課題設定力がすべて
宮内美穂教授が行うプロジェクト研究は、教授の専門の消費者行動研究をもとに、各団体が開催するマーケティングコンテストに参加することがメインの活動だ。
「年間で4つのコンテストに参加するため、他のゼミに比べ、1年で得られるものは多いと思います。その分スパルタな面があるのも事実です。私自身、ダメな案に対しては厳しく指摘出しを行います。年の半分以上はアイデア出しのディスカッションで終わってしまうほど、最初の課題設定に関してはこだわって進めています」。
例えば、少年院に入った子の更生をテーマにしようとした学生に対し、「自分自身経験がなく、周囲にも経験者がいない中で、その子たちの立場に本当に立つことができるのか」についてとことん詰めた。「課題の発見と解決策の設計には、そのことを自分ごととして考えて、とにかく当事者の意見を聞き、調べ尽くす必要があると考えています。単に第三者として世の中の課題感に乗っかるだけでは、ダメです。とことん追究できる課題を発見できるまで、繰り返しアイデアを出してもらいます」。
フットワーク軽く、現場に出る
宮内教授のプロジェクトでもうひとつ重視しているのが、「フットワークの軽さ」だ。「今はネットで簡単に情報はとれる時代ですが、課題背景については必ずFace to Faceで調査するよう、指導しています。サンプリングは必ず200~300件以上、実際街に出て、直接とってくるよう、指導しています。学生たちも、気になったことに関しては、積極的に動く子が多いです」。
ある企業から、「高齢者のアイス消費を上げる」という課題があったときには、大学付近の高齢者にヒアリング。「寝る前に食べることが多い」という声が多く集まったことから、商品アイデアを思案。ある牧場で「睡眠を促すミルク」を見つけ出し、実際牧場に足を運び、効果を聞くなどして、企業プレゼンに挑んだ。結果、コンテストでは最優秀の評価を得たという。
「2020年度は、コロナ禍で十分にフィールドワークができませんでした。すると学生たちの方から『自分たちも先輩たちのように情報取材を行いたい』と声が上がったり、大学も空いてないなか、自主的に集まる姿も見られました」。
宮内教授のプロジェクトでは、2、3年生が合同でチームをつくり、各課題に向かう方式だ。「先輩たちの姿を見て、この積極的に外に出る姿勢を学んでくれていると思います。毎回、プロジェクトがひとつ終わるごとに、各グループで“他己分析”を行います。学生たちで評価し合い、切磋琢磨しながら成長してもらえれば、と考えています」。
学生たちがマネジメント 能動的な活動を
宮内美穂教授がマーケティングの研究に身を置くきっかけは、大学時代の恩師からの薦めだったという。
「就職したら特定の業界についてしか扱えないが、研究者として様々な業界を知れることに魅力を感じました」。
現在は、コロナ前後で消費行動にどのような変化があったか、調査を進めているという。
「私自身、研究欲が強く、基本プロジェクトのマネジメントは、3年生の学生を中心に任せています。いつ集まるか、その日の授業で何をするか、私に何を確認してもらいたいか、など学生主導で進めてもらっています。私の指導を待っているのではなく、殻を破って、社会で通用できるスキルを身に付けてもらいたいです」。
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