本連載読者の大学職員や「広報について意見交換をしたい」と来訪いただいた他大学職員、筆者の講演後に質問の手が挙がる参加者からよく尋ねられる内容のひとつが、「何から始めれば良いのでしょうか?」といった相談です。
もちろんここでいう広報とは、学生募集以外の「大学広報」のことです。大半の場合が追手門学院大学のような中小規模の大学で広報担当者がごく少数という大学の方からです。
筆者もかつてひとり担当者だった時代もあります。これは「新任大学広報担当者あるある」なのかもしれませんが、筆者自身はそういうことを考えたことがなかっただけにハッとさせられました。
「何から始めれば良いのか」に答えるには、自大学のミッション・ビジョン、中長期計画における広報の位置づけの確認とそれらに基づく現状分析が必要です。現状分析に必要な考え方やポイントは、データも参照しながら本連載で取り上げてきました。しかし、「そうは言っても結局何をすれば良いですか」という声も依然としてある(あくまで筆者の感覚)ことから、今回は「初めて大学広報担当になったものの大学としての方針もなく、何から始めれば良いのか分からない時にどうするか」というテーマで筆者なりにまとめてみたいと思います。
個人の努力次第なメディア露出
先に結論からいうと、メディア露出を増やすことに注力することを提案します(図表1)。本連載4回目ではメディア露出に結びつく「報道対応」の重要かつ必要性とそれに取り組む全国の大学数を集計した統計データを示し、学生数1000人以下の大学を除いて大半の大学が対応済みであり、広報担当部署の基幹業務であることを説明しました。
ただこのデータは報道対応に「取り組んでいるか否か」を尋ねただけであり、個々の大学が「どの程度取り組んでいるか」までは分かりません。筆者が、当然といえば当然の「メディア露出を増やすこと」を提案するのは「広報担当者の努力と工夫次第で(ある程度までは)成果を上げられる。競合大学と差がつく」からです。
効果測定の指標設定から
「何から始めれば良いのか?」という状況は、大学として広報活動の目的や成果指標が決まっていないことが考えられます。広報・PR論の研究における広報活動の成果指標には...