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データで読み解く企業ブランディングの未来

意味のリニューアルでロングセラーを再活性化

Supported by 企業広報戦略研究所

企業の広報戦略・経営戦略を分析するプロが、データドリブンな企業ブランディングのこれからをひも解きます

今回のポイント
① 市場・生活者欲求の変化への対応
② n=1視点によるインサイトの発見
③ 世の中視点でニュースバリューのある情報を創出

およそ日常生活に必要なモノは市場にあふれ、生活者にとっては選択肢が増えて製品情報も得やすい時代になりました。一方、企業にとっては製品ライフサイクルが短くなり、せっかくの新製品もほどなく陳腐化してしまう厳しい市場環境とも言えます。

実際、自社のロングセラー製品にテコ入れしようとしても、市場に長く認められているからこそ今さら新しいネタが出しにくく、ニュースメディアやSNSでの話題化が難しい、というような悩みもよく耳にします。

現在多くの企業において、コモディティ化した(付加価値による差別化が少ない)既存製品をいかに活性化させるか、ということが共通の課題になっています。

企業広報戦略研究所が2020年に実施した企業広報力調査では、企業の広報部門が最も強化したい広報力は「情報創造力」という結果でした(図1)。なかでも、企業・ブランドのPRメッセージ・ストーリーやそれを支えるファクトの情報づくりが、多くの企業で注目されていました。

図1 企業の広報部門が強化したい広報力
「第4回企業広報力調査」
調査期間:2020年5月22日~2020年8月7日、n=474
調査方法:郵送・インターネット調査/企業広報戦略研究所調べ

*情報創造力:ステークホルダーの認知・理解・共感を得るために、メディア特性に合わせたメッセージやビジュアルなどを開発する能力

そこで今回は、製品自体は変えずに、新たな情報を作ることによって既存製品をリニューアルするポイントを紹介します。

「意味」のリニューアル

例えば、インスタントカメラ「チェキ」は、スマホの普及により市場規模が大きく縮小していました。しかし「被写体を記録して人と共有できる」という既存の機能的価値だけでなく、「メッセージを入れられるかけがえのない贈り物」という新しい「意味」を見出し、新たな顧客層を獲得しました。これは、製品自体は変えずに、製品の「意味」や「価値」を再提示することで、既存製品がリニューアルできた例です。

モノに対する生活者の欲求は近年変化しています。以前は、ある程度明確なニーズや必要性に基づいて製品が作られ、結果として「役に立つ」ことが評価されていた時代に比べ、今の生活者の志向は必ずしもそうではありません。工業プロダクトの品質が各社ともに高度化した結果、壊れず、かつ役に立つのは当然のことになり、“むしろその製品が自分自身に何をもたらしてくれるのか”という、製品の存在意味を問うアプローチが求められてきています。

そこで問題になるのが、変化する生活者の欲求をどのように捉えるかです。

これまでの製品ニーズは、プロダクトサイドの用意した枠組みの中で、生活者の志向を定量的に計測し、量的多数や平均値を参考にしてきました。

しかし、今起こりつつある生活者欲求の変化は「製品の既存の使い方・あり方はこうあるべき」といったプロダクトサイドの思惑から離れ、もっと個人個人の自由な捉え方(=志向)に変化しています。そのため、定量調査による量的多数からのアプローチではなく、「n=1」つまり一個人の内的志向からのアプローチを行います。

まだ世の中には顕在化していないインサイトを発見し、それを充足させるような既存製品の新しい使い方・あり方を提示すること(「意味」のリニューアル)によって、新しい製品価値を提供するのです。

n=1視点でインサイト発見

具体的には、手順は以下の通りです。まず、ある個人(n=1)のお気に入りの事象に着目することで見えてくる隠れた欲求・志向を探します。それは本人にとっても自覚されていない欲求のスイッチで、言われてはじめて「そうだ、それ!」と気づくような心理です。

このステップは、あくまでも一個人の具体的な事象から考えることが大切で、その個人心理の深層から、当該製品が有している新しい「意味」の「きざし」を拾い出します。

ただし、この個人的な「きざし」は、共感されるものでなくてはなりません。その確認のため、「きざし」の「市場性」を定量的に調査します。

市場性が確認されたら、新しい欲求・志向の情報を世の中(メディア/社会)が語りたくなる「ニュースバリューのある情報」に仕上げます。

なお、超・情報過多時代においても、人に語りたくなる情報に磨き上げるために、例えば電通グループのオリジナルメソッド「PR IMPAKT®」が有効です(図2)。

図2 人に語りたくなる情報にするメソッド「PR IMPAKT®」
https://www.dentsu-pr.co.jp/pr/pr-impakt.html

また、こうした新しい「意味」の発見プロセスを誰でも実践できるプログラムに「News Value Sprint」があります。これは“n=1視点”と“世の中視点”とのアイデア開発プログラムを合体させたもので、電通パブリックリレーションズとデコムが共同開発しました。

こうしたプログラムを参考にしつつ、“意味のリニューアル”という視点を、ロングセラー製品のテコ入れに取り入れてみてはいかがでしょうか。

「News Value Sprint」の詳細についてはこちら
https://www.dentsu-pr.co.jp/releasestopics/news_releases/20201225-2.html

企業広報戦略研究所 上席研究員
(電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン部 部長)
根本陽平(ねもと・ようへい)

“PR思考”でプロモーションから商品開発・企業活動の全体設計を行う。宣伝会議「動画プランニング実践講座」「バズクリエイティブ講座」講師。共著に『PR思考』『自治体PR戦略』『戦略思考の魅力度ブランディング』。

企業広報戦略研究所
(電通パブリックリレーションズ 同部 シニアコンサルタント)
植野友生(うえの・ともみ)

PRコンサルタントとして、主に外資系消費財メーカーの各種ブランドや、流通などのPR領域のアイデア開発・コンサルティングを担当。2021年のトレンドを各界のオピニオンリーダーと予測する、電通PRトレンド予測レポートの執筆も担当。

企業広報戦略研究所は電通パブリックリレーションズ内に2013年に設立。企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析・研究を行う。https://www.dentsu-pr.co.jp/csi/

OPINION

製品を大きく変えなくても、ビジネスは伸ばせる

News Value Sprintの目的は、製品/サービスイノベーションに頼らず、人々に共感を巻き起こす引き金となる情報を創り出すことです。では、人間は、どういう時に共感するのでしょうか。デコムでは、“人の共感スイッチ研究”として3000件にのぼるn=1の共感体験の分析()を行いました。共感の引き金になっていたのは、「叶えたいが叶っていない願望が充たされる」ということでした。

人間のインサイト研究から生まれた共感スイッチの一覧「共感フラワー」を発表

消費者が表立って口にはしないが、心の奥でふつふつとしている「叶えられていない願望」。消費者自身も諦めたり、押し殺していたりしている欲求です。激しく変化する現代社会にあまた存在する「充たされぬ願望」と、自社の事業やブランドの特性で下支えできる「新しい意味/価値」の接点を探し出すことが重要です。

デコム
代表取締役社長
大松孝弘氏

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