静岡県内に点在する好景観の茶畑を貸し切るサービス「茶の間」。するが企画観光局が、新たな企画に至ったポイントは何だったのか。企業のマーケティングに従事してきた筆者がその発想方法を解説します。

富士山を臨む「茶の間」。
我々するが企画観光局は2017年4月にスタートしたDMOチームで、静岡県中部地域における活性化事業に取り組んでいます。前回は、局で展開している茶畑の中のプライベートティーテラス「茶の間」に関して、コンテンツ開発の方法について解説しました。今回は引き続き「茶の間」を例に発想方法について取り上げます。
発想は“カラオケボックス”
「茶の間」は、静岡県内の素晴らしい景観の茶畑に設置されたウッドデッキのテラスです。我々はそこで、各畑でつくられた個性豊かなお茶を楽しみながら自由な時間を過ごせる事前予約制の完全貸切サービスを展開しています。
茶を入れるのもセルフサービス、飲食物の持ち込みも可で、使い方は利用者におまかせとなっています。
今でこそセルフのサービスとなっていますが、構想当初は、まったく逆。農家によるもてなしサービスを検討していました。このプロジェクトを進めるにあたって我々が設定したターゲットは“丁寧な暮らし”を志向する女性層。その層が観光に求めるものは、非日常での「癒やし」でした。これらを特別なおもてなしをすることで満たそうと考えていたのです。
農家の方々による呈茶、茶席、はたまたオリジナルのスイーツの提供まで様々なもてなしを検討しましたが、いずれもすぐさま暗礁に乗り上げてしまいました。ただでさえ忙しい農家の方々の負担を増やすと、その分受け入れ人数が少なくなってしまい、ビジネスを小さくしてしまうからです。
どんなもてなしであれば、負担を増やさず、人数もスケールさせられるか。初めはこの疑問に応えるアイデアを探していましたが、なかなか、良いアイデアは出てきませんでした。そこで、発想を逆転させてみることにしました。農家の方々は何もせず利用者が自分で癒やされ満足するサービスはないか。そんな視点で身の回りに目を向けたときに、思い至ったのが“カラオケボックス”でした。
現在、カラオケボックスは歌を歌うだけでなく、子連れのママ会やビジネスパーソンの会議や打ち合わせなど、防音、貸し切りという特徴を活かして様々な用途に利用される空間となっています …