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Twitter活用の広報戦術

「バズ」の本質を行くSNSマーケティング

古田大輔(ジャーナリスト、メディアコラボ代表)

ここ数年で、ソーシャルメディアを取り巻く環境は大幅に変わった。元BuzzFeed日本版創刊編集長でメディアコラボ代表の古田大輔氏が海外の動きも踏まえ、企業アカウントのあるべき姿について解説する。

世界のメディア関係者が加盟するOnline News Associationの年次総会(2019年9月、筆者撮影)。

読者の中には「いまさら」という思いを抱く人もいるだろう。企業がどうTwitterを活用するか。SNSマーケティングなどという話題は、ここ数年語り尽くされている。どうやって親しみを持ってもらうか。若年層へのリーチ。炎上対策からアカウントのセキュリティまで……。

だが、ここ3~4年で決定的に変わったソーシャルメディアを取り巻く環境についての解説はまだ少ない。筆者は2015年10月にソーシャルメディア活用で急成長した米国発のインターネットメディア「BuzzFeed」日本版の創刊編集長に就任したが(2019年5月に退任)、当時と今ではSNS戦略の世界は大きく変わった。この記事では、その変化について説明しつつ、実際の企業アカウント運営をどうしていくべきかを論じる。

「バズる」は大量発信ではない

具体的なアカウント運用方法=戦術レベルの話をする前に、まず、前提を押さえる必要がある。ゴールや戦略について、つまり、企業がTwitterアカウントを運営する理由について考えよう。

多くのTwitter担当者は「バズって自社や自社サービスへの認知を高め、売上やイメージアップにつなげたい」と答えるだろう。そのためにもフォロワーやリツイート(RT)やいいねが増える方法を教えてもらいたい。そういった相談を受けることがよくある。

その際にまず説明するのが「バズるとは何か」だ。これを「多くの人に読まれること」と考えている人が少なくない。だが、それは本来的な意味ではない。多くの人に読まれるだけだったら、Yahoo!ニュースやSmartNewsのような大規模なアグリゲーションプラットフォームでたくさんクリックされればよい。さらに言うと、新聞やテレビのようなマスメディアを通じて、発信元から視聴者に一方向に伝えることと変わりがない。

「バズる」とは、企業が一方的に何かの情報を大量発信することではない。「バズる」とは情報を受信した人が自らそれをRTし、シェアし、コメントし、自分たちで「拡散」「共感」していくところにその本質がある。その時、情報の受信者はただの視聴者(オーディエンス)から情報の利用者(ユーザー)に変わる。その能動的な行動は情報の発信元に対する、より深い関心につながる。

例えば、BuzzFeed Japan(BFJ)が運営している「BuzzFeed Kawaii」(図1)。20代とその前後の女性が主なターゲットとなっているTwitterアカウントで、RT数といいね数の合計が平均でも優に1万を超え、2万を超えるものも珍しくない。フォロワー数は1年半で43万を超え、日々成長を続けている。

図1 Twitterアカウント「BuzzFeedKawaii」

ポイントはユーザーの役に立つ商品やサービスの情報を、2枚のインフォグラフィックにまとめ、スマホで見やすく表示しているところだ。ユーザーが喜ぶ情報を、喜ぶフォーマットで提示する。その基本に忠実なアカウント運営によってRTやいいねの数が伸びる=バズる、そしてそれがフォロワー増にもつながる。

こういう事例と正反対なのが、いわゆる「炎上マーケティング」だ。目にしたユーザーを不快にし、怒りの言葉とともにそのツイートが拡散したとして、企業に何のプラスもない。あの企業は不快だという印象が広がるだけで、何も残らないどころか、マイナスでしかない …

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