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本田哲也のGlobal Topics

スパイクスアジア2019 光る「PR新興国」の躍進

本田哲也

今年の「スパイクスアジア」審査員メンバー。

アジア版のカンヌライオンズと言われる「スパイクスアジア」。今年も9月25日から27日にかけての3日間、シンガポールで開催され、PR部門にはアジア各国からおよそ300作品がエントリーされた。

今年の特徴としては、バングラデシュ、スリランカ、パキスタンといったいわゆる「PR新興国」の作品がゴールドを受賞したことだろう。日本から審査員として参加した電通パブリックリレーションズの国田智子氏は、「今年のスパイクス全体のテーマである"Asia Rising"を感じさせる傾向でした。例えばパキスタンの『トラックアート・チャイルドファインダー』は、マスメディアも普及していない地域でトラックをメディアとして活用するというアナログなアプローチ。SNS全盛にあって逆に強いインパクトを与えました」と語る。

今年の審査委員長は、世界最大のPR会社エデルマンの韓国法人でBrand&Digitalの責任者を務めるクリスティン・パーク氏。同氏が示した審査基準は、①Sustainability(持続性があるか)②Diversity(多様性があるか)③Relatability(自分ごと化するか)の3つだ。持続性や多様性は、本家カンヌライオンズでも近年重要視されるが、身近な自分ごと化の観点を並列で入れているのが特徴だろう。

そんな中、グランプリに輝いたのは、中国のテンセントによる「A Team of One」と名付けられた臓器移植ドナー登録の推進キャンペーン。中国ではドナー制度を知らない人がほとんどで、「遺体を傷つける行為を受け入れがたい」という文化的な背景もある。こうした課題に対し、ドナー登録の「命をつなぐ意義」を感動的に伝えた点と、ドナー登録者が前年の4倍以上に増加したという結果が評価された。

「審査の過程では、PRだからといって、いわゆるソーシャルグッドなテーマばかりでいいのか、といった意見も出されました。オーストラリアの『マックピックル』、インドの『ボイスオブハンガー』など、ちょっとひねったアイデアでSNS上の関心を集めるキャンペーンも一定の評価を得ました」と国田氏は今年の審査を振り返った。

日本からは、昨年のPRアワードグランプリでも入賞した、群馬県高崎市の「レッドレストランリスト(絶メシリスト)」(博報堂ケトル・博報堂)などがゴールドを受賞。後継者不足で事業継続が危ぶまれるレストランを絶滅危惧種(レッドリスト)になぞらえて、様々なメディアを通じて話題化に成功した点が高く評価された。

アジアの中では、PR主導の統合キャンペーンに日本の強みがあるように思える。まさに「Asia Rising」の時代である。日本も存在感を示せるように前進あるのみ。ではまた来月!

本田哲也(ほんだ・てつや)

本田事務所代表/PRストラテジスト。PRWeek誌「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」に選出された日本を代表するPR専門家。『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などの著作、講演実績多数。海外での活動も多岐にわたり、世界最大の広告祭カンヌライオンズの公式スピーカーや審査員を務めている。

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