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インターナルコミュニケーション改革

号外、サイネージなど社内コミュニケーションツールの革新

ヤマハ発動機 企画財務本部経営企画部 山下和行

4年にわたり、ヤマハ発動機で社内広報の改革に携わった筆者。その足取りを総括しながら、現場担当者に役立つヒントをお届けします。

    前回までのあらすじ

    社内報のリニューアルを任された筆者。まずは若手の関心を引くために誌面デザインを大きく変更します。骨子となるコンテンツは変えず、ヤマハらしい企画を重視。ヤマハブランドを「自分ごと化」してもらうための連載などもスタートし、より多くの社員から関心を持ってもらえる社内メディアへと成長させていきます。前号では、誰が担当になっても成立する、社内報の制作フローについて解説しました。

ヤマハな人のモノ創り用語集
2015年8月発行

新中期経営計画
2016年5月発行

MOTOGP500勝記念誌
2017年6月発行

鈴鹿8耐 祝4連覇!
2018年8月発行

ゲンバのチカラ
2019年2月発行

社内ブランドイベント「Yamaha Day」パンフレット
2019年6月発行

号外の活用

通常の社内報に加えて、号外を活用し経営メッセージの浸透やインターナルブランディングを推進している。「ヤマハな人」などブランディングのツールは社員の個人名宛に配付し特別感を演出する。

1. 紙の社内報は必要か

デジタル化やIT化が進み、SNSが普段の生活に根付き、昨今はIoT、AIなどが生活に入り込んでいます。そんな変化の中で、数年前から社内で議論されているのが「紙の社内報は必要か?」ということです。

社内報を担当するようになってから紙媒体の制作作業の大変さを体験し、「いつまで紙の社内報をつくるんだろう」と弱気にもなりました。若手社員を対象としたグループインタビューでも、20代は雑誌など紙媒体との接触が少なくなっていることが分かり、リニューアルを間近に控えた2015年12月時点では「若い社員をターゲットにするなら、やはりデジタル」と考え、将来的には紙の社内報を廃止し、イントラのウェブグループ報に重点を置き、社員がスマホを通じて、いつでもどこでも自由にアクセスできる方がいいのではないかと考えていました。

しかし、スマホは社員全員が持っているわけではないので、紙の社内報を完全になくすのは少し乱暴だとも思いました。それに、会社にいる時間以外で、若手がスマホでイントラの中にあるグループ報をチェックするシーンを想像しても、正直リアリティを感じませんでした。

デジタル媒体の最大のメリットは編集の手軽さでしょう。デジタルは制作がスピーディーで修正も簡単です。ページ数や誌面のスペースに限りがある紙媒体と違い、レイアウトも自在でデザインの自由度が高く、気軽に新しいことができます。

一方、紙にしかないものを考えてみました。紙は手に取ったときに質感があります。重さや触ったときの感触、またインクの匂い。そこには人間が五感をフルに使って感じられる情報があるのです。そして、全体を一度に見ることができます。手にとってパラパラめくって見渡して、どんな内容が載っているかを一瞬で捉えられる。その上で、興味があるものだけを詳しく見ることができる。そのような紙にしかない良さは非常に魅力的で、そのメリットを活かしたいと考えました。

そして今は、これからさらにデジタル化が進んでも、紙媒体はなくならないと思っています。なぜなら、紙の制作物は一発勝負です。印刷したら修正がきかないぶん緊張感があり、それだけ神経を使ってつくります。毎回つくり手の「気持ち」や「熱」といったものが、誌面に乗るような気がします。

また、誌面はトータルのページ数を決めると、スペースの制限で写真も1点まで絞り込まなくてはならない場面があり、そのときには複数の候補素材から選び抜きます。突き詰めれば、紙の社内報は毎号が1点ものの作品のようです。つくり手がどれだけ手をかけているかが伝わります。

職種によっては勤務中にパソコンを使わない社員もいます。すべての社員が同じように手に取れる紙の社内報は、年齢、性別、職種やポジションを超えて社内のつながりを生むには最適なツールです。

2. 社内報の号外

当社は、中期計画の浸透・共有やインターナルブランディングのツールとして、社内報の号外を活用しています。

2016年は、その年から始まった新たな中期計画に合わせて、グループ全体で目標を共有するために、全社方針と事業ごとの戦略を簡潔に表した冊子をつくり、社員へ配付しました。それは社内報号外という位置づけで、ひとつの冊子内に日本語と英語で同じ内容を記載し、本社籍の社員と海外拠点のマネージャー以上の階層の社員へ配付しました。日本語と英語を同時掲載した理由は、海外のグループ社員を念頭に、グループ内では国や国籍にかかわらず、同じレベルの情報を共有するという意思を伝えるためです。

その号外の制作では、社内報のレイアウトデザインの考え方から大きく飛躍させ、数字やグラフの表現にインフォグラフィックスの手法を取り入れ、またピクトグラムを新たに開発して、グループ社員が視覚から容易に理解できるデザインに挑戦しました。

そして、配付した後は、日本でも海外でも社員の机の脇に常に置いてある、そんなシーンをイメージしてつくりました。レイアウトデザインにはお国柄が表れますので、海外拠点へ配付する冊子をつくる場合は、見やすさや理解しやすさに気を配ります。本社の社員には見慣れている表やグラフでも、海外拠点で初めて見る社員には理解に時間がかかる場合があります。また、英文ではテキストのフォント選びも重要です。

幸いにも、その後に実施したアンケート調査では号外に対するポジティブな反応がありました。またある日、本社で開かれるグローバル会議で、海外拠点の幹部社員が号外を小脇に抱えて歩いているのを目にして、今後もこのような活動を継続したいと強く思いました。

ただ欧州では近年、環境意識が個人レベルでも非常に高まっていて、無償で配付する雑誌などは最終的にゴミになるので、その視点から配付を嫌がるところもあります。よって、本社からの一方的な配付は拠点の負担になることもあるので、事前の会話が必要です。

次に、ブランディングツールの事例をご紹介します。当社は、2013年1月にブランドスローガンを刷新し、それからグループ全体への浸透活動を行いました。また、新しいスローガンだけではなく、スローガンの背景にある「ヤマハらしさ」という抽象的な情報や、ブランドスローガンに込める経営者の思いを社員へ伝えるため、2015年の夏に、社内報の記事と連動させて号外を発行しました。位置づけは、当社で最初のブランドブックです。

制作では、社長だけでなく「ヤマハらしさ」をコトバ化するプロセスに関わった役員へ何度もヒアリングを行い、分かりやすいシンプルな表現にまとめる作業を繰り返しました。また、デザイン部門とも連携し、抽象的な情報をビジュアルで表現することにも挑戦しました …

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