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インターナルコミュニケーション改革

新しい社内報をつくる準備~ミッション達成に必要なこと

ヤマハ発動機 企画財務本部経営企画部 山下和行

4年にわたり、ヤマハ発動機で社内広報の改革に携わった筆者。その足取りを総括しながら、現場担当者に役立つヒントをお届けします。

    前回までのあらすじ

    2014年11月。上司から突然、1964年創刊の社内報のリニューアルを任された筆者。翌年の1年間はマイナーチェンジの時期とし、2016年から本格的に勝負しようと大まかな計画を立て、編集の基礎を学びます。そしてこれまで1カ月という短期間で制作していた社内報を発行3カ月前から取り組む体制をつくり、具体的に刷新へ動き始めます。

経営陣と若手社員の座談会を定例化
柳弘之前社長と若手社員。リニューアル後の社内報『Revs(レヴズ)』では、若手社員の関心を高めようと、経営陣と若手社員との座談会を定例化した(2016年2月号「中から見たヤマハ」特別企画:社長と話そう!)。

『Revs(レヴズ)』

1. 社員に聴く

既存コーナーのマイナーチェンジを織り込んだ社内報をつくりながら、新しいスタイルの社内報制作に協力してくれるプロの開拓を進め、同時に社内で行ったのがグループインタビューです。目的は、社員のニーズ、中でも若手社員の本音をつかむことでした。

それまでも毎年定例で社員アンケートを実施していました。しかし、対象者は限定的で、調べる内容も「今年の特集はどうだったか?」といった過去記事に対する評価が中心で、「どう改善したら良いか」といった次のアクションにつながる調査ではありませんでした。

グループインタビューは2015年の1月から3月にかけて実施しました。対象を20代から30代前半までの若手社員に絞り、1グループ5人、5グループ計25人へ協力を依頼し、終業後に1時間から1時間半の時間を取ってもらい、社内報についてざっくばらんに話してもらいました。職種も偏らないよう、管理や営業に加えて、技術や生産の社員にも声をかけ協力してもらいました。

当社では、40代後半から50代の社員は社内報をよく読み、経営から発信されるメッセージへの興味関心も強いということは分かっていました。この世代は、ある時期に昇進昇格試験で社内報の記事から質問が出されたことがあって、目を通すことが半ば強制された影響もあります。しかし、その下の世代は、そんな経験はありません。インタビュー前に「若い社員は社内報をあまり読んでいない」という仮説を立てていたものの、実態は想像以上にひどいものでした。

参加した若手いわく、会社が発行している社内報の中身は表面的なものでしかない。誌面が白黒で読む気がしない。給料日にもらうフリーペーパーという感じ、つまり読む価値がない……。それら若手社員の本音に加えて、毎月25日の給料日の夕刻に、社内報がゴミ箱に捨てられているのを少なからず目にしていました。若手の本音を知って心が痛みました。

社員全員に知ってほしいことがあるのに、ベテランと若手など世代間で情報にギャップがあるのは良くないですし、特に将来会社を背負っていく若い世代が、会社の現状や方向性に興味関心が薄いことも良くありません。さらに、社風や「当社らしさ」を若い世代にしっかりと伝えて、受け継いでほしいと、実態を知ったことで、社内報のリニューアルにかける思いをますます強くしました。

「外から見たヤマハ」は一番の人気企画
社員に一番人気があるコーナー「外から見たヤマハ」。自社が外部からどう見られているかを伝える。掲載回のテーマは「ダイバーシティ」で、キャリアコンサルタントの遠藤佳代子さんにお話をうかがった(2016年5月号)。

2. 本気・本音で社長プレゼン

自分の勉強、新しい制作の仕組みづくり、また社内外からの評価分析などを行いながら、全面リニューアルに向けて準備を進めました。そして、2015年の11月までにリニューアルの全体構想を固めました。また、年明けの1月発行号からすぐにスタートできるよう、見切りで新しいデザインの仕込みも進めました。

リニューアルの基本的な考え方として、メインターゲットを20代から30代前半の若手社員に設定しました。大きさはA4サイズから女性のバッグにも入れやすいB5サイズに変更、全ページをカラーにし、目を引く写真とレイアウトデザイン、デジタルネイティブ世代を意識した見出しや文章量にもこだわりました。また、社内報が変わったということを明確に示す目的で、社内報自体の名称も一新しようと考えました。

11月末、新しい社内報の案を携えて社長プレゼンに臨んだ僕は、まず「社長が毎回一生懸命書かれているメッセージですが、管理職以外はほとんど読んでいないですよ」と伝えました。一瞬、表情が曇ったように見えたものの、社長は鷹揚に「じゃあ、どうしたらいいんだ?」と尋ねてくれました。

そこで、グループインタビューや社員へのアンケート調査の分析なども織り交ぜ、社内報のつくりが古く、若い社員が興味関心を持てるものではないこと、社員が最も知りたいのは人に関わる情報で、同期や同僚、先輩たちがどういう仕事に取り組んでどんな成果を挙げているかに関心があることなどを伝え、「社内報をリニューアルさせてください」と訴えました。

また、1964年の創刊から50年以上使ってきた『社報ヤマハ』という名称も、心躍る瞬間をすべての人に届けたいという意味を込めて、2013年に刷新した当社のブランドスローガン「Revs your Heart」にちなんだ「Revs(レヴズ)」に変更したいと提案しました。さらに、社内報のリニューアルと連動して、イントラネットで日本語と英語で運営しているグループ報も合わせてリニューアルしたいと訴えた結果、すべてのアイデアを承認していただきました。

そして2016年1月から新しい社内報『Revs』がスタートしました。ある程度自信を持っていたとはいえ、リニューアル創刊号の発行後に、「社内報、変わったよね」「今度の社内報、いいよね」などの声が、社員から多数届いたときには、ほっとしました。

3. ふさわしい費用をかける

読者の皆さんは「いい社内報をつくってほしい。ただし社員向けだから、あまり予算はかけずに」なんて言われたら、どうしますか...

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