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米国PRのパラダイムシフト

調査から読む日米の共通課題は「社内コミュニケーション」にあり

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。

これからのPRプロの領域として最も重要になっていくのが「インターナルコミュニケーション」だ。欧米のグローバル企業はこの分野に日本とは比べ物にならないレベルの投資をし、力を入れている。今回は海外におけるその位置づけや最新の調査から見える現状や課題を紹介していきたい。

企業の存亡に関わる重要課題

「インターナルコミュニケーション」のプライオリティが急速に高まっている理由として以下のようなものが考えられる。

❶ 経営とはコミュニケーションそのものである

まず、第一に、「経営とはコミュニケーション」に他ならないという認識の広がりだ。かつてのような護送船団方式、暗黙の了解的な意思決定ではなく、経営の透明性が求められる時代であり、多様なステークホルダーとの対話を通じた共感の獲得が重要になっている。言うまでもなく、社員は企業にとって最重要のステークホルダーであり、経営コミュニケーションの一丁目一番地が社内コミュニケーションということになる。

❷ 社員一人ひとりがスポークスパーソンに

ソーシャル時代には社員の一人ひとりがスポークスパーソンとなりうる。社長が何か言う以上に、開発者や現場担当者の声が、信頼され、共感を集める。誰もが会社を代表して物言う時代に、密なコミュニケーションによる情報や認識の共有化は大切だ。

❸ ほんの一人の「軽はずみ」が命取り

たった一人の社員の粗相が企業全体のレピュテーションを大きく毀損する時代である。教育、意志疎通、相互理解など、危機管理の側面からも、インターナルコミュニケーションの重要性はかつてなく高まっている。

❹ エンゲージメントの絶望的低さ

日本の会社員のエンゲージメント(会社への貢献意欲、満足度、会社との絆)は世界一低いという調査がある。多くの人が長期間、同じ会社に勤めるのに、忠誠心も愛着もないという結果で、労働生産性もきわめて低い。経営幹部層と社員や、社員同士のコミュニケーション不全もその大きな要因と考えられており、「やる気」「士気」に直結するコミュニケーションの改善は急務となっている。

❺ インターナルとエクスターナルの境目の消失、融合

これまで社内報などで、細々とコンテンツ化されていた社員のストーリーは、社外のステークホルダーにも魅力的なコンテンツとして認識されるようになっている。理解促進や共通の目標の共有、士気の高揚などを、社内外同時に達成するツールとしてストーリーを発掘し、伝える重要性にコミュニケーションのプロが気づき始めている。

❻ 人材獲得は企業の生命線

世の中は未曽有の人手不足。優秀な人材を惹きつけるためには、社員に愛される企業でなければならない。その魅力を社内外で共有していく必要性がこれまでになく高まっている。

❼ 秒速で変化する時代

テクノロジーやグローバル化など、すべてが圧倒的なスピードで変化していく時代に、スピーディーに情報共有をし、対応していくことは企業の存亡に関わる …

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