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米国PRのパラダイムシフト

ポスト真実時代の社会的メッセージ 企業は「声を上げるべきか」

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。

昨今、社会的・政治的な議論を呼ぶPRキャンペーンを打ち出す企業が増えている。今回はそのトレンドと反響、日本企業への影響について掘り下げてみたい。

批判にひるまなかったP&G

宣伝会議発行の『広告・マーケティング会社年鑑2019』で、筆者が広報・PR領域のグローバルトレンドワードとして掲げたのが「パーソナルブランディング」「ソートリーダーシップ」「ソーシャルグッド」「インフルエンサーマーケティング」「AI」、そして「旗幟鮮明」だった。「旗幟鮮明」とは英語で言えば「Take a stand」、つまり政治的・社会的問題に企業として姿勢を明確にし、声を上げるべきである、という考え方である。

つい最近、話題になったのが、P&Gのかみそりブランドのジレットのケースだ。1月13日に発表した新CM動画が、強いメッセージで大いに物議をかもした。セクハラをする男性や「男の子なんだから」と子どもの喧嘩を放置する父親たちの姿を映し出しながら、"toxic masculinity(害のある男らしさ)"の問題点を指摘。

30年間、続けてきた「The best a man can get(最高を、男の手に。)」というスローガンを「Is this the best a man can get?(これが男ができるベストなのか?)」と言い換え、男性にいじめやセクハラをやめるよう、意識変革を呼びかけた。

この1分48秒の動画は、これまでにYouTubeで2800万回以上(2月10日時点)再生されるなど、賛否入り混じり、大反響を呼んだ。中には、ジレット商品を捨てる写真を投稿したり、激しい怒りをソーシャルメディアでぶちまけたりする男性も多く、ネット上では「主力ターゲットである男性を敵に回すとは最低の手法だ」と評する意見も相次いだ。こうした批判に対し、ジレット側は「我々は議論をするべきだ。もしもきちんと話し、論じなければ、本当の変化は起こらない」と毅然と対応、まったくひるむことはなかった。

メディアの反応もおおむね好評で、特に、社会的問題に取り組む企業を高く評価する若者世代や女性には高い評価を得たことから、これから新規顧客となる層を取り込むうえでは効果を発揮したという見方もある。これだけの注目を集めたということ自体が成功である、という評価が大勢を占めている。

同社はキャンペーンの一環として、こうした男性を取り巻く問題解決に取り組む米非営利団体に対して今後3年間にわたり年間100万ドル(約1億1000万円)を寄付する予定を明らかにし、今後も、このイシューに取り組む姿勢を明確にしている …

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