新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
明けましておめでとうございます。元号も変わる、まさに新しい時代の幕開けとなる2019年。グローバル「賢人」たちのご意見を交えながら、初春恒例の「PRトレンド予測」をお届けしたい。
「色見本帳」で有名なパントン社の選ぶ、「今年の色」は「Living Coral」(生きたサンゴ礁)。温かみのあるピンク色はoptimism(楽観主義的)な空気感を表し、前年の鮮やかな紫色「ウルトラバイオレット」とは正反対の「癒し系」。「我々は、つながりと親近感を醸成するオーセンティック(正統派)でイマーシブ(没入型)な体験を求めている」というのが選ばれた理由なのだという。
筆者は2018年、「孤独」についての本を執筆したが、取材の過程で気づいたことがある。それは、コミュニケーションを促進するはずのソーシャル・テクノロジー全盛時代に人々はもっと孤独になり、つながりを求めているということだ。人はコミュニケーションをし、コミュニティをつくるという「コミュ欲」という根源的欲求を持っている――そう気づかされた。
賢人の大予測 ①
PRのプロに必要な好奇心・高潔性・共感力・勇気

Holmes Group
Founder
ポール・ホームズ氏
混迷の時代、PRのプロに必要な要件は4つ。好奇心、高潔性、共感力と勇気だ。世の中の変化に迅速に対応していくために例えば、ポップカルチャーの動向などにも精通するような好奇心が求められるし、誠実さと高潔性は欠かせない。
また、PRとは、一方的に自分の良さを喧伝することではなく、基本は「聞く」ことである。ステークホルダーの声に真摯に耳を傾けるところが起点だ。こうしたご時世だからこそ、PRのプロはリーダーに対して、社外の声を伝え、指針を示していく役割を担う勇気を持たなければならない。
二極化時代に「中立」であることというのがとても難しくなっている。かつてはリスクを回避することに主軸が置かれていたが、「正義」のために声を上げるブランドも増えている。自社の利益ばかりを優先するのではなく、社会のために、という打ち出し方も重要であり、ファクトよりも「ストーリー」や「フィーリング」といったものが実は伝わりやすいのだということも肝に銘じておくべきだ。
賢人の大予測 ②
「社会的目的」掲げるPRキャンペーンが増加

Weber Shandwick
CEO
アンディ・ポランスキー氏
コミュニケーションは地政学的、マクロエコノミクス的なリスクが増している。その中で、企業や組織はこれまでにない競争にさらされている。コミュニケーションはそういった環境を生き抜くために極めて重要な役割を果たしている。企業がそのPRキャンペーンにおいて、「ソーシャルパーパス(社会的目的)」を掲げる傾向が目立った。プラスチックのパッケージを排除することを掲げた冷凍食品・スーパー大手のアイスランド社のイニシアチブなどは話題を呼んだ …