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編集会議2019 SPRING

本の装丁はデザイナーと編集者、互いの領分に入り込める仕事

装丁家・鈴木千佳子さん

手を動かすことが好きだった少女は、ファインアートからグラフィックデザインの世界へ。目が合った途端、作品の世界へ足を踏み入れたくなるような装丁を手がける鈴木千佳子さんに、装丁の面白さや大切にしていることを語っていただきました。


幼いころから絵や工作など、手を動かすことが好きだったという鈴木さん。中学時代に先生から勧められ、ファインアートを主とする美術系の高校へ。

「手を動かすことは好きでしたが、入学してみたら自分より上手い人はたくさんいるし、自由課題はテーマを絞りきれずに迷うことも多かったですね」。

高校3年生のときに訪れた美大の学園祭で、初めてデザインの世界を知る。

「ただ絵を描くだけではなく、別の形で紙に落とし込む手法があるんだ!と驚きました。もともと、テーマのある方が手を動かしやすいと感じていたこともあって、デザインって面白そうだなと感じたのを覚えています」。

その後、武蔵野美術大学のデザイン情報学科へ進学。エディトリアルはもちろん、ブランディングからプログラミングまで幅広く学んだ。助教授だったグラフィックデザイナー、佐藤直樹氏の授業で、パッケージデザインや装丁の仕事にも触れる機会を得た。

大学2年のときに参加したワークショップを機に、グラフィックデザイナーのセキユリヲ氏の仕事を手伝ったり、作品を講評してもらったりするように。「アイデアの強さで切り込んでいく広告の世界では勝負できないタイプだと分かっていたので、文具などの紙ものをつくれる企業やデザイン事務所で働けたらいいなと考えていました」。

打ち合わせ直後にイメージラフを描き残す。「迷ったとき原点に立ち戻るための大切な資料です」

イラストを依頼する際も、なぜその人なのか、内容も含めて設計図として1枚にまとめて提案する。

広告の現場で過ごした5年間

就職活動の一環で、作品をまとめたポートフォリオをアートディレクターの寄藤文平氏が主宰する文平銀座に送ると、アルバイトとして声がかかり、卒業後にそのまま入所。最初の5年間は、「向いていないと分かっていた」という広告の仕事が7割を占めた。

「寄藤さんに『書籍に向いているのは分かっているから、最初はほかの仕事で基礎を身につけた方が偏らなくていい』と言われて。今振り返ると、あの5年があってよかったと思います。規模もサイズも大きな広告で、きちんと伝えるための根源的なプロセスを経験できたのはいい刺激になりました」。

広告で身につけた"伝えるための工夫"は装丁の仕事にも活かされている。1年かけてつくりあげた小林賢太郎氏の『短篇集 こばなしけんたろう』は、紙の色合いやレイアウトの変化で、目はもちろんページをめくる手までも楽しませるデザイン。「実際の感覚を共有したくて」、わざわざ自分で見本を製作して担当編集者に送ったという …

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