新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
「今の仕事に満足していますか」「会社に愛着を感じていますか」─そう問われたら、皆さんならどう答えるだろうか。日本では、多くの人が終身雇用制度のもとで長年働き続けることができるのだから、会社に対する社員の帰属意識も忠誠心は高い方ではないか。そう感じる人も多いだろう。
しかし、日本のビジネスパーソンの多くは、本当は自分の会社が「大嫌い」らしい。それを如実に示すのが、世界的に見た日本人の「エンプロイーエンゲージメント(employee engagement)」の低さだ。
これは、企業と社員の関係性を示す言葉で、日本語ではぴったりはまる訳語が見つからないのだが、engagementを直訳すると、「従事」「関与」。要するに「社員が企業に対して、どれぐらいの愛着やコミットメント、忠誠心、士気や誇りを感じているか」ということだ。そういった気持ちを持つ社員が多ければ多いほど、企業の競争力は増し、高い利益を生み出すことができる。
エンゲージメントが新たな指標
最近、欧米では「従業員満足度」のかわりに、この「エンプロイーエンゲージメント」を重要な経営指標として掲げる企業が増えている。世界的な調査会社、ギャラップ社が2011年から2012年にかけて142カ国、20万人以上を対象に行った調査で、日本で「仕事にengageしている」と答えた人の割合は先進国の中で最も低く、わずか7%。これは米国(30%)などと比べても格段に低かった(図1)。
さらに、米PR会社エデルマンの調査(2018年)では、世界28カ国中、日本人は「世界で最も自分の働く会社を信用していない国民」という結果が出た。「自分の会社を信用するか」という問いに対して信用すると答えた割合はわずか57%。韓国と並び世界最低で、米国(79%)、イギリス(71%)、中国(82%)、インド(86%)よりはるかに低く、ロシア(64%)よりも低い …