新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
前号に引き続き、イギリス・オックスフォード大学の「The Reuters Institute for the Study of Journalism」が世界36カ国・地域の7万人を対象にした調査結果をまとめた「Digital News Report」から、世界のメディアの潮流を紐解いていこう。
「信頼される情報源」とは
最近のメディア動向で注目されるのは、アメリカにおける有料コンテンツメディアの復権だ。3月号でアメリカメディアの現状について取り上げた際、新聞メディアの復調について触れたが、図1を見ていただいて分かるように各国の有料コンテンツが頭打ちの中で、アメリカでは信頼性の高い新聞などの有料コンテンツの人気が高まっている。
2016年11月から比べると、ニューヨーク・タイムズは50万人、ウォール・ストリート・ジャーナルが20万人、ニューヨーカーが25万人も有料会員数を増やした。
こうした大手メディアの復調は特に2016年の選挙でトランプが大統領に選出されてから、信頼される情報源としての価値が見直されたことが大きい。両メディアとも質が高く、掘り下げた報道が改めて評価されているわけだが、日本の新聞社などと決定的に異なるのは、徹底して読者のニーズや行動を分析し、コンテンツ作成に活かしている点だろう。
また、従来型の記事だけではなく、動画やきわめて精緻でインタラクティブな分析・データアナリティクス、インターネット上のラジオのようなポッドキャストなど、マルチメディアコンテンツが豊富に盛り込まれている点も魅力だ。読み応え、見応えのあるコンテンツ、データが盛りだくさんで、「有料でも読みたい」という読者が増えている …