新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
2017年も残すところあと少し。総括ということで、この1年のクライシス・不祥事案件をグローバル視点で振り返ってみたいと思う。
11月初旬、出張でロンドンに行ってきたのだが、現地のメディアが大騒ぎしていたのが、政治家のセクハラスキャンダルだった。国防相が「15年前、ジャーナリストの女性の膝を触った」などとして辞任したのをはじめ、別の国会議員の名前も取り沙汰されており、激震が続いている。
ハリウッドでセクハラ告発
そもそもの発端は、アメリカの有名プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインが多数の女性にセクハラやレイプをしていた事件が表沙汰になり、それまで沈黙していた女性たちが次々と声を上げ始めたことだった。
このムーブメントの原動力になっているのが、ソーシャルメディアだ。女優のアリッサ・ミラノが、Twitterで、セクハラを受けたことのある女性たちに「#MeToo」のハッシュタグをつけてメッセージを投稿しようと呼びかけたところ、すさまじい勢いで広がった。
その後も告発は続いており、ドラマシリーズ『House of Cards』などで有名な男優ケビン・スペイシーをはじめ、俳優、プロデューサーなど多くの著名人の名前が挙がっている。このハリウッド発セクハラキャンダルはまだまだ止みそうもなく、グローバルに多方面で影響が広がりそうな様相だ。
「翻って日本ではどうか」ということだが、まだその余波は到達していないようにも見える。こうした形で、被害者が立ち上がることに対する見えない圧力がある社会ということもあるだろうが、最近でこそ少なくなった「セクハラおじさん」は、日本にもかつて山のように存在していたのは事実だ。
法律に抵触する暴力までは至らずとも、「これまで一切、セクハラ的な言動をしたことはない」と断言できる人はどれぐらいいるだろう。というのも、「セクハラ」の定義はあいまいなところもあるからだ。
あなたの会社の幹部は大丈夫?
「女性たちが次々と口を開き始めたことは、流れが変わろうとしていること、眠れる獅子たちが目覚めたこと、そして権力者、少なくとも腐敗した権力者が力を失いつつあることを示唆している」とWIRED誌は指摘した。今後、日本でも同様の流れが起きるとすれば、皆さんの企業や組織の幹部などが指弾を受ける可能性も十分ある。まさに、企業不祥事の現場は「昨日の常識、今日の非常識」である。
セクハラについての教育の徹底、ソーシャルメディアのモニタリングなど改めて、予防的対策を講じておく必要はあるだろう ...