この世には「バカ」がつくほど愛される、PR上手な商品・サービスがある。そんな「PRバカ」と呼べる存在を求めて、筆者が仕掛人を訪ねていきます。
File:6 ベネクス
広報会議編集部から「リカバリーウェアの面白い会社があるんです。ベネクスを取材しませんか?」という話があったので、私自身それほど興味はなかったのですが(苦笑)、取材に行くことを決めました。それが実際に体感し取材をするとどんどん変わっていくのがこの商品の肝なのですが、最初は知る由もなかったのです。
日経MJの2017年のヒット番付に、「睡眠負債」というキーワードとともに商品が上がっていたベネクスのリカバリーウェア。時代に合ったこの商品は今後のトレンドになる可能性も高いということで、今回も徹底調査してきました。
1着1万円のウェアが大ヒット
さて、話を取材前の私の行動に戻したいと思います。ホームページを見ると、リカバリーウェアを着ると睡眠時に体力が回復しやすいと書いてあります。そうは言うけれど、私は布団に入ったら3秒で寝られます。どんな環境でも。つまり正直なところ、このコンセプトにはまったく興味がありませんでした。
それに、メーカー自身が性能を訴求しても消費者は見慣れてしまっていることも事実です。ですが、取材2日前に広報担当の友部崇さんにリカバリーウェアを送っていただき、着て寝てみて驚きました。それからもう1カ月近く、毎日リカバリーウェアを着て寝ることを続けています。やめらないのです。やばいぞ、この商品は。
代表取締役の中村太一さんに会うために、新宿の高島屋の8階に向かいます。あまりにこのウェアが気に入ってしまったので、8階のトイレで着替え、取材をすることにしました。そう、たった2日でこの商品のファンになってしまっている私がいるのです。しかし、そこは商品開発コンサルタント魂で、知られざる事実を明らかにすべく挑みました。
社長が来る前に時間があったので直営店舗の店員さんと話をすると、ウェア以外にも様々な商品があると紹介してくれました。レッグコンフォートというふくらはぎにつける商品や、首から肩周りまで覆ってくれるネックコンフォートなどに興味を惹かれます。話を聞いているうちに、なんと4万円相当の商品を買ってしまいました。運が良ければあとから商品をもらえるかもしれないのに(笑)。自分の財布でお買い上げです。商品の実証は後半でお伝えします。
新宿のベネクスの店舗は最低限のスペースしかありません。直営店は数店舗しかなく、あとは委託販売で複数のスポーツウェアと並列で並んでいるようです。つまり、この新宿店舗の売り場面積が最も大きい部類だと想像されます。ですが、売上は7億円もあります。
社員はたったの30人。昨年はこの半分くらいの社員で、日経MJのヒット番付に登場したのです。社員も少なく、1着1万円前後と高額のウェアにもかかわらず売れるベネクスには、何か秘密があるに違いありません。
美崎's eye
あえて「コントロールしない」
中村社長に会うと、とにかく若い。話を伺うと、失敗を糧にリカバリーウェアという新しい市場を切り拓いたようです …