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美崎栄一郎のPRバカ

地味で裏方的な商品なのに熱いファンが!「ScanSnap」のアンバサダー戦略

美崎栄一郎(商品開発コンサルタント)

この世には「バカ」がつくほど愛される、PR上手な商品・サービスがある。そんな「PRバカ」と呼べる存在を求めて、筆者が仕掛人を訪ねていきます。

(左)PFU ドキュメントイメージビジネスユニット パーソナルビジネス営業部
担当課長 山口 篤さん

(右)商品開発コンサルタント 美崎 栄一郎(筆者)

    File:1 PFU「ScanSnap」

富士通グループに「PFU」という、スキャナーを製造している会社がある。創業の地は、石川県。現在も石川県かほく市に本社がある。ここの広報の仕方が面白くて、ずっと不思議で気になる存在だったので今回、横浜にあるPFUの拠点で裏話も含めて話を聞かせてもらった。

何が不思議なのかっていうと、地味で裏方的な商品なのに、ファンがとても多いこと。書類をデジタルデータにするために読み込む機械がいわゆる「スキャナー」と呼ばれるが、形がかわいいわけでもない。あくまで実用的な、地味な機械なのだ。

PFUは、法人向けの専門的なスキャナーから一般消費者であるユーザーが使うスキャナーまでを取り扱っている。私がよく目にしたのは「ScanSnap」(スキャンスナップ)という一般消費者向けの商品だ。2001年発売で、先ごろ全世界累計出荷台数で400万台を突破した。

ScanSnapも他のスキャナーと基本的な構造は変わらない。紙をローラーで送り込んで、センサー部分で読み取り、それをPDFやJPEGなどのデジタル書類にするという地味な商品なのだ。実は私自身は、ほぼ毎日このScanSnapを使っているのだが、製品の形や色、デザインが好きでファンになったわけではない。これが不思議なのだ。

事務機器のカテゴリで考えても人気のあるホワイトボードとか、コピー機なんて聞いたことがない。でも、ScanSnapは人気がある。ここに地味な商材をPRするためのヒントがあると思うのだ。

アップルのファンの人は製品の形や色や操作性に惚れ込んでいるわけだが、ScanSnapは極めて効率的ではあるけれど、ホントに地味な機械だ。それなのに、ファンが多い。また、お金をかけずに広報的な視点で商品をPRしているのだ。この連載のタイトルでもある「PRバカ」的なニオイがする。そのワケを知りたい。どうしても知りたい。で、突撃してきました。

売上600億なのに広報?

PFUの広報担当・徳永潤哉さん(経営戦略室パブリックリレーション部)によると、同社の売上高は1306億円(2016年度連結)。事業も多岐にわたるが、その売上の半分近くをドキュメントイメージの事業、つまり今回注目しているスキャナーに関連する事業が占めているとのこと。

私もScanSnapユーザーではあるものの、会社の規模など調べたことがなかった。これだけの売上高があるのに、お金をかけない面白い仕組みで商品の魅力を伝えているとは驚きである。

ちなみに私が在籍していたころの花王の化粧品事業「ソフィーナ」の売上高は700億円くらいで、商品の認知を上げ、売上を伸ばすために基本的に広告の力に頼っていた。もちろん、ScanSnapも広告やプロモーションをしないわけではないだろうが、私が目にしていたのは、広告ではない形のものが多かったのだ。

    美崎's eye

    左にあるデスクライトのような形状のスキャナー「SV600」を筆者も愛用。スキャナーの仕様に合わせて、黒い机に買い替えたほど(笑)。

アンバサダーが勝手に説明

実は、私がPFUという会社、そして「ScanSnap」を知ったのも「アンバサダー」に就任しているブロガーさんの記事からだった。この「アンバサダー」の仕組みがPFUという会社の「PRバカ」の肝なのだ。

アンバサダーという肩書きの人が勝手にScanSnapのことをいいも悪いもネット上に書いて、便利な使い方や活用テクニックを自在に紹介している。時には「買おうかな、どうしようかな」「使い方が分からない」と迷っている見知らぬTwitterユーザーを見つけては、勝手に話しかけて教えてくれることもある。アンバサダーをはじめとするユーザーが颯爽と現れて丁寧に回答してくれるのだ。

製品のファンによる手厚いアクティブサポート。これが、他の会社のスキャナー製品では起こっていない現象なので、面白い …

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