この世には「バカ」がつくほど愛される、PR上手な商品・サービスがある。そんな「PRバカ」と呼べる存在を求めて、筆者が仕掛人を訪ねていきます。

(左)商品開発コンサルタント 美崎栄一郎(筆者)
(中)集英社 第五編集部 部長 安楽竜彦さん
(右)集英社 コンテンツ事業部 コンテンツ事業課 課長 東 秀人さん
File:2 集英社『週プレ酒場』

2017年6月5日発売号の「週プレ」では「乾杯!グラビア号」として酒場をアピール。
集英社の『週刊プレイボーイ』が50周年を迎えることを知ったのは、Facebook上でのざわつきからだった。「グラビアアイドルが日替わりでママを務める酒場がオープンする」という投稿だった。
週刊プレイボーイ(週プレ)は、1966年に創刊した。かつてのライバル誌は『平凡パンチ』(マガジンハウス)だが、既に廃刊になっている。現在はガチンコの競合がいない状態だ。にもかかわらず、週プレの発行部数は19万部(日本雑誌協会調べ/2016年)。経済誌の『週刊ダイヤモンド』よりも多い。
根強いファンが付いている週刊誌なのだが、実のところ、私はほとんど読んだことがなかった。競合誌が廃刊になるということは、男性週刊誌がコアなファン以外に読まれない雑誌になりつつあったのかもしれない。それなのに、読んだこともなかった私やSNSでつながっている友だちのこのざわつきは何なのだ。
ネットで「週プレ酒場」を検索すると、改めて50周年事業だということを知る。ネットで予約しようとしたが、まったく予約が取れない。何が起こっているんだ、何が行われているんだ......それが知りたい。中を見てみたい。ということで、取材という名目で、突撃してきました。
編集者の熱量が伝わる空間
週プレ酒場とは『週刊プレイボーイ』の50周年記念事業として2017年6月、新宿・歌舞伎町のど真ん中に1年間限定でオープンした居酒屋とBARだ。数週間限定のイベントかと思いきや、1年間も続く。出版社の事業としてはかなり大がかりだ。
店内は50席程度の小さな居酒屋と、現役グラビアアイドルとカウンター越しにお酒を飲める5席だけの閉じられた空間「週プレ酒BAR」で構成される。「週刊プレイボーイ」のロゴが光るネオンやメニュー、割り箸袋やコースターに至るまで、こだわり抜かれたもの。実際に中に入ると、細部へのこだわりが半端ない。週プレの誌面のような熱量が注ぎ込まれた酒場なのだ。過去号のメモリアル記事もあしらわれ、50年の歴史を感じさせる。
この取材のためということで週刊プレイボーイを熟読してみると、単なるグラビア雑誌ではなかった。政治から風俗、流行、スポーツ、漫画と、男性が好きなありとあらゆる話題が熱く語られている。ジャンルは多岐にわたるのだが、その熱量が凄い。バカなくらいに熱いのだ。
最近は電子雑誌の読み放題サービスもあるが、過激な表現の誌面は自主規制でカットされてしまう。だから、熱い週プレをすべて楽しみたければ紙で読むしかないのだ。そんな雑誌と同じ熱量が、酒場にも及んでいる。
美崎's eye

ネオンが光る壁面。もう一方には現役グラビアアイドルの写真が大胆に貼り出されている。これは実際に誌面を飾った写真で、11月に馬場ふみかさんから小宮有紗さんに変更されたばかり。
値ごろ感重視の価格戦略
ここまでこだわって採算が合うのかと思ったが、料理や飲み物も大衆居酒屋チェーン並みの価格だ。しかもスタッフと打ち上げにやってきたグラビアアイドルなどと出くわすこともあるらしく、そんなレア体験の可能性もあるなら安いものだ …