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美崎栄一郎のPRバカ

メーカーや小売店も巻き込む 表参道の「文房具カフェ」はなぜ人気?

美崎栄一郎(商品開発コンサルタント)

この世には「バカ」がつくほど愛される、PR上手な商品・サービスがある。そんな「PRバカ」と呼べる存在を求めて、筆者が仕掛人を訪ねていきます。

(右)東光ブロズ 代表取締役 奥泉 徹さん
(左)商品開発コンサルタント 美崎栄一郎(筆者)

    File:4 文房具カフェ

    2012年6月にオープンした文房具カフェ。文房具メーカーや小売店と文房具ファンのリアルな接点となっている。

表参道にある「文房具カフェ」。2012年にオープンして以来、文房具好きの間で聖地のようになっている場所です。毎月2~3回はテレビや雑誌などのメディア露出をしているそうですが、プレスリリースは一切出していません。確かにこの連載で取材しようと思ったのも、なぜか話題を集めている文房具カフェの手法を明らかにしたかったから。

ちなみに冒頭から内情を明かすと、今回取材で使わせていただいたカフェのスペースは席料を払っています。広報会議の編集部が払っているので私の懐は痛んでいませんが、メディアの取材で場所代を取るというのは私の知る限り初めてでした。

正直なところ、表参道という一等地で単価の安い文房具を売って採算が合うのでしょうか。文房具カフェを経営する東光ブロズ 代表取締役の奥泉徹さんにお伺いすると、「表参道に並ぶ高級なブランドと比較しても、日本の文房具の品質は遜色がない。例えば、お馴染みのMONOブランドの消しゴムひとつとってみても、品質では最高級。なので文房具をコンセプトにした店を表参道で出してもいいのではないか」とのこと。

「合い鍵」で引き出しが開く

文房具カフェを運営する東光ブロズは元々、文具卸業を営んでいました。卸業界の環境は厳しく、新規事業として文房具カフェの構想を始めたそうです。ただし、BtoBの卸業とBtoCの飲食業は業態が極端に異なります。

こういう異業種進出は成功する確率が非常に低いのですが、文房具カフェの場合、奥泉さんがバーテンダーの経験を持ち、飲食コンサルの会社でも働いていたこと、さらには前職で音楽業界にいたことが成功した要因かもしれません。文房具業界では異色の経歴の持ち主であり、発想が自由なのでしょう。

文房具カフェのテーブルには鍵付きの引き出しが備わっており、700円で永久会員になると合い鍵をもらうことができます。この合い鍵で手元の引き出しを開けると様々な文房具が入っており、自由に使える仕組みです。入っている文房具はそれぞれ異なっているため何度も通いたくなります。リピート客をつくるための施策として考えたそうです。文房具カフェが登場したときに最も話題になっていたのが、こんな文房具が入っていたというSNSでの投稿でした。

「合い鍵」という秘密のアイテムで差別化することで会員になったことを自慢することもできるためか、情報が拡散したのです。周りで引き出しを開けている人がいると、自分も開けたくなりますからね。

    美崎's eye

    店内には様々なメーカーの文房具がずらりと並んでいる。文房具カフェオリジナルのアイテムもあり、取材時には猫のイラストが入ったペン立てなどが売られていた。

1万人以上の「濃い」会員

文房具カフェの会員登録用紙には好きな文房具やメーカーも書き込む必要があります。今では会員が1万人以上。つまり、会員が好きなメーカーのイベントを告知できるのです。それも文房具好きな人限定なので、非常に「濃い」リストです …

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