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記者の行動原理を読む広報術

守りか攻めか、どちらを選ぶ? ネガティブ情報の開示

松林 薫(ジャーナリスト)

炎上の渦中でさらなるネガティブ情報が発覚。情報の出し方ひとつで、記者にとっての「スクープ」の大きさと価値が決まる。

2017年10月に大きな問題として浮上した神戸製鋼所の品質管理に関する不祥事。その後も芋づる式にネガティブ情報が報道され、世間を騒がせている。広報が最も真価を問われるのは、企業が危機に直面したときだ。神戸製鋼所の事例のように、不祥事や経営危機などが発覚すると、準備を整える間もなく報道合戦の渦に巻き込まれることが多い。その際、公表する情報の取捨選択や、報道機関とのコミュニケーションを誤れば、傷を深めてしまう結果になりかねない。

ポイントになるのは、新たに発覚したネガティブ情報の扱い。すでに世間から冷たい視線を浴びているところに、消費者の怒りを買いそうな問題や、取引先や株主に動揺を与えそうな事実が出てきたとき、どう対応するかが重要になる。

「攻め」「守り」どちらを選ぶ?

記者の側から見ていると、対応は大きく3つに分かれる。(1)積極的に開示して誠実さをアピールする「攻め」タイプ(2)なるべく出さないようにする「守り」タイプ(3)方針が定まらず右往左往する「迷い」タイプ──だ。(3)が論外なのはいうまでもないとして、広報担当として気になるのは(1)(2)のどちらを選ぶべきか、ということだろう。

結論から言えば、長期で見るか短期で見るかによって評価は変わってくる。「攻め」タイプは、足元の報道は大きくなるが、記者の印象は良くなり、信頼回復過程ではポジティブな情報を出しやすくなる。逆に「守り」タイプは、足元の報道量を抑えられる半面、記者の印象を損ねて、反転攻勢の機会が遠のく。さらに、失敗すると「情報を隠している」と見られ、足元でも火に油を注いでしまうリスクがある。

ネガティブ情報が「お宝」になる

前回も述べたように、企業不祥事などが「炎上」している最中は、記者もてんてこ舞いになる。企業側の発表や会見を追いかけるだけでも大変なのに、新たな不祥事や関連分野への飛び火、企業や監督官庁の対応など、あらゆる分野でスクープ競争が勃発するからだ。世間の関心も高まっているので、新たなネガティブ情報が発表されればそれなりに大きく扱うことになる。見出しや記事のトーンも、「また不祥事が発覚」といったように厳しくなりがちだ。

企業からすれば、それが分かっていて公表に踏み切るのは勇気がいるだろう。詳しい状況を把握しないうちに発表すれば、取材や記者会見で突っ込まれ、かえって不信感を増してしまうという恐れもあるかもしれない。「しっかり調査して、全体像が見えてから発表したい」という心情は理解できる。

記者の側も仕事量が増えて忙しいので、情報漏えいを防ぐことができれば、発表まで気づかれない可能性はある。ほとぼりが冷めてから詳細を公表し、社内で「無用な炎上を防いだ」という評価を受けることができるケースもあるはずだ。「守り」の広報を選ぶ合理性は、それなりに高いのである。

ただし、この戦略は2つのリスクを抱えることになる。まず、ネガティブ情報を発表せず抱え込むということは、記者から見れば極めてニュース価値の高い「お宝」を持っているのと同義だ。それを抜いたときの価値は、企業側が守りの壁を厚くするほど上がっていく …

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