ニュースが少ない時期に登場する「まとめモノ」。どのようにテーマが決まり、掲載に至るのかを知ると、記者への売り込み方が見えてくる。
この連載では、記者にとって「スクープ」と「特オチの回避」がいかに重要かを強調してきたが、その次に重視される能力に、それほどニュース価値が高くないネタを寄せ集めて記事に仕立てる「企画力」がある。前回説明したように、紙面や番組などの枠を埋めるには一定量の記事が必要で、ニュースが少ない時にはそれ以外の暇ネタが求められるからだ。
「まとめ」が掲載されるまで
どんな組織でも仕事を選り好みする人は嫌われるが、報道機関でも「あいつは特ダネにつながる取材ばかりして日々の紙面に貢献していない」という評価が定着すると出世はできないものだ。そこで記者は、急なネタ枯れに備えて「まとめモノ」「傾向モノ」などと呼ばれる記事を用意する。例えば、「最近、◯◯が相次いで発売されている」「××を導入する企業が増えてきた」「若者の間で▲▲が人気だ」といった原稿を書いてストックしておくのだ。
こうしたネタは、「腐らない(日持ちする)」という利点がある。流行や傾向が続いている間であればいつでも使えるうえ、1社モノのネタに比べると「尺」が調節しやすいので重宝するのだ。
広報の側からすると、こうした記事にはチャンスとリスクの両面がある。前者は、単体としてはニュース価値が低い商品や取り組みでも、事例の一つとして取り上げてもらえる可能性があるということだ。半面、ポジティブな記事で紹介事例から漏れると記者にとっての「特オチ」のような形になり、広報としての評価を下げる恐れもある。
このタイプの記事で自社の商品などを取り上げてもらうには、どうすればいいだろう。まず、ニュース部門で「まとめモノ」が掲載されるまでの流れを押さえておきたい。図1は筆者が所属していた日経の事例だが、おそらく他の新聞社や報道機関でもそれほど違いはないはずだ。
まとめモノの企画案は、週1回、デスクやキャップ(取材チームのリーダー)が参加する編集会議にかけられる。会議が開かれる曜日と時間は部によって異なるが、ほぼ固定されている。社外秘というわけでもないので、同業他社の広報や親しい記者にそれとなく尋ねれば、こうした情報は得られるはずだ。
会議の前日、キャップは部下から1週間以内に書けそうな記事の候補を聞き取って資料にまとめる。記者は事前に日時が確定しているリリースやイベントと一緒に、まとめモノのアイデアも提出する ...