もしも自社がネット炎上に巻き込まれたら……。ネット上の誹謗中傷対策や炎上案件に詳しい著者が企業広報が押さえておきたい正しい対応をレクチャーする。
昨今、ネット炎上は「目にしない日はなくなった」と言えるほど、無数に起きています。それだけ「炎上」は日常的な出来事になっていますが、よく考えてみると明確な定義がありませんよね。そこで、本稿においては「ある事柄に関して、批判的な内容を中心とした意見や感想が多数発信されている状況」と定義してお話ししようと思います。
この定義の通り、「炎上」の原因となる投稿には、擁護や理解を示す趣旨のものも含まれています。否定的なコメント以外の投稿も含めて「炎上」は形づくられているのです。また、「ネット炎上」というと、インターネット上の問題がもとになっていると考えがちですが、近時「文春砲」が話題になったように、テレビや雑誌などのマスメディアを発端にしている例も多くあります。そのような場合、より多くの人が関心を持つため、影響が大きくなることもあります。
原因は「ひどい」という感覚
ネット炎上の原因はいろいろありますが、一番大きな原因は、多くの人が「これはひどい」と感じたこと。「ひどい」と感じる感覚は人によって違い、世代や性別、あるいは属しているコミュニティなどによっても異なっているため、危険性の見極めが難しいところではあります。
一方で、発信内容に賛成する人や、「これくらいは別にいいのではないか」と静観する人もいます。近年、様々な考えを持つ個々人が、手軽に自分の意見を発信することができるようになったため、ネット上の議論が活性化し炎上につながっています。
特にTwitterをはじめとしたSNSは、誰もが直感的に思ったことを発信・共有できるため、雪だるま式に情報が拡散されます。さらに、話題になっている情報をまとめて広告収入を得ている「まとめサイト」が炎上を加速させています。
炎上を避ける4つのポイント
ネット炎上はネガティブなイメージを残すため、避けられるのであれば避けるべきです。思いもよらないところから発生することが多いので完全に避けることは困難ですが、以下の点に留意していれば、少なくともリスクを減らすことはできます。それは、(1)不祥事を起こさないこと(2)発信内容を事前に多方面から吟味すること(3)投稿するアカウントを間違えないこと(4)虚偽の説明や隠ぺいをしないことの4点です(図1)。
詳しく見ていきましょう。まず(1)不祥事を起こさないことですが、不祥事はマスメディアでも報道されることが多く、不祥事である以上「これはひどい」と捉えられます。インターネット上でも話題が広がり、ネット炎上につながる可能性が高いです。不祥事は起こしたくて起こしているわけではないと思いますが、普段からコンプライアンスを意識しておくことが重要です。
次に、(2)発信内容を事前に多方面から吟味することですが、すでに述べたように、「これはひどい」と感じる感覚は人、世代、性別、属しているコミュニティなどによって異なっています。そのため、多様な視点から「これはひどい」と感じる内容になっていないか検証するべきでしょう。当然、一人では無理があるので、できるだけいろいろな属性の人に忌憚ない意見を聞いて、発信内容を吟味する必要があります。
次に、(3)投稿するアカウントを間違えないことですが、会社の公式アカウント運用者が個人のアカウントに投稿するつもりの内容を公式に投稿してしまったというケースを想定しています。ほほえましい内容であれば問題にはならないと思いますが、批判や中傷であれば炎上は必至です。また、このような間違いに対して「アカウントが乗っ取られた」という説明がなされる場合がありますが、これは虚偽だと思われてしまいます。
インターネット上では、虚偽の説明や隠ぺいに対する拒否反応が非常に強く、それがあるだけで批判の的になります。したがって、(4)虚偽の説明や隠ぺいをしないことが重要になります。なお、隠ぺいの対象は社内情報の隠ぺいだけでなく、外部に公開されていた情報も含みます …