企業不祥事の発生からその後の経過を記者がどう見ているのか。広報対応のヒントがそこにある。
日産自動車と神戸製鋼所で、品質管理をめぐる問題が相次いで発覚した。どちらのケースも、書類やデータの組織的な改ざんが含まれているという点で、単純ミスや事故とは異なる次元の不祥事といえる。今後の展開はまだ見通せないが、社会的な影響が大きくニュース価値も高いので、少なくとも年内は報道が続くだろう。
記者は「敵」ではない
有名企業の不祥事をめぐる報道の典型例を図1に示した。
記者は、こうした展開を頭に置いて、「今は何がニュースになるか」「次の節目のイベントは何か」を予測しながら取材する。スケジュール感は業界で共有されているので、次の局面に移ると記者が追うネタも一斉に変わっていく。
流れを順に追っていこう。
記者の側からすると、事件は企業や監督官庁の発表という形で、突然、降りかかってくることが多い。報道によって表沙汰になるケースもあるが、いずれにせよスクープした社を除けば、記者は不意打ちを食らった形で巻き込まれていくのである。
報道が最大の盛り上がりを見せるのは、この「発覚期」だ。突然のニュースは社会的なインパクトが大きく、ニュース価値が高くなるからだ。
この段階では、新聞・テレビはもちろん、雑誌やネット専業メディアなど、あらゆる媒体の記者たちが取材に参入する。新聞・テレビの中でも、日常的に取材をしている経済部に加え、社会部、科学部、政治部、解説部など様々な部署の記者が一斉に取材を始めることになる。
この時期、対応する広報としては、集中砲火を浴びている心理状態に陥るだろう。社会部や雑誌の記者から高圧的な言葉を浴びせられ、ショックを受けることもあるはずだ。
しかし、本質を見誤ってはならない。表面上は企業を袋叩きにしているように見えても、記者が戦っている本当の相手は「ライバル社」だからだ。
もちろん、ジャーナリズムは「権力を監視し、不正をただす」という責務を負っている。社会的に力のある大企業は権力の一角と見なされるので、その不正を糾弾するし、市民の怒りを代弁しようともする ...