記者の取材拠点である「記者クラブ」は、広報にとっても有効な取材の場といえる。情報をどう集め、どう活かすべきか。
3月期決算企業の広報にとっては、中間決算がらみの発表で記者クラブに行く機会が増える季節だ。こうした発表でもないかぎりクラブには足を運ばないという人も多いと聞く。まして、マスコミに叩かれたり、高圧的な記者の取材を受けたりした経験があれば、敷居が高いと感じるだろう。
これは、多くの広報にとってクラブが「情報発信の場」だと認識されているからだろう。もちろんそれは間違いではないが、もう一つ重要な側面があることを見落としてはならない。実は、広報にとってもクラブは「取材拠点」だという事実だ。実は、この意識を持っているかどうかで、記者にとっての広報の評価・位置付けも決定的に違ってくるのである。
公開していない情報を得る
良いか悪いかは脇に置くとして、日本の大手マスコミの報道体制は、記者クラブを中心に成り立っている。例えば記者の人事も、クラブと密接に結びついている。スクープ競争が記者の社内評価を左右するという話はこれまでも書いてきたが、この「ゲーム」はクラブ単位で行われているからだ。
記者クラブは大きなものになると1社で10人前後が所属している。しかし、特定の会社の担当に限ると、そのうち1~3人にすぎない。言い換えると、ある企業やテーマをめぐる報道合戦は、この極めて小さい集団の中で繰り広げられている。企業によってはクラブに所属する記者5~6人の間で働く力学が、社運を左右する可能性もあるということだ。にもかかわらず、商品や決算の発表がないと近づかないというのは、リスク管理上も問題である。
では、どうすれば記者クラブを攻略できるのだろう。ここで重要なのが「記者クラブを取材する」という発想の転換だ。広報が記者やクラブを取材するノウハウは、基本的には記者が広報や企業を取材するのと違わない。ただ、取材手法について説明した本はあまりないので、広報向けにアレンジして紹介しておこう。
取材で得る情報は、(1)公開情報 (2)一般情報 (3)秘密情報──の3つに分けられる(図1)。
公開情報とは、ホームページなどを通じて誰でも得られるもので、企業ならプレスリリースなどで発信している。記者クラブの場合は、連絡先の電話番号やリリースを投げ込む際のルール、加盟社などの情報がこれにあたる。
この逆が(3)で、企業なら発表前のトップ人事や進行中の製品開発についての情報に当たる。記者の場合、どんな特ダネを追っているかが代表的な秘密情報である。
これらの中間にあるのが一般情報だ。秘密ではないが公開もしていないので、現地に足を運んだり、人から聞いたりしなければ手に入らない ...