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地域活性のプロが指南

目指すは次世代漁業と後継者づくり 議論を重ね、いよいよ団体設立へ

長谷川琢也(一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン 事務局長)

宮城・石巻周辺の若い漁師らが地元漁業の振興に向け団結。復興支援のため同地に拠点を構えたヤフーの長谷川琢也さんとともに、ついにフィッシャーマン・ジャパンが立ち上がります。

フィッシャーマン・ジャパン代表理事の阿部勝太。会社員を経て帰郷し漁師になった。

「やばい漁師がいる。はせたくさん(著者)に紹介したい!」。出会いのきっかけは、知人によるそんなざっくりした、そしてアツイ言葉でした。

2012年春、石巻に事業所「ヤフー石巻復興ベース(現ヤフー石巻ベース)」の立ち上げを会社(ヤフー)に提案し、異動・移住が決まった頃のことです。当時私はYahoo!ショッピング「復興デパートメント(現東北エールマーケット)」の生産者開拓に取り組んでいました。そんな中、冒頭の誘いの言葉に引き寄せられ、石巻市北上町の小さな浜が点在する「十三浜」という地域で暮らす若い漁師に出会ったのです。

漁師といえば、日焼けした顔や腕、しかめっ面で怖そう、さらに昼間から日本酒を飲んでいる……。皆さんのイメージも当時の私と同じではないでしょうか。ところが、待ち合わせ場所に現れたのは爽やかな好青年でした。礼儀正しく、常に笑顔で話も面白い。初めて会ったのに、十年来の友人のようなフレンドリーさ。それが現フィッシャーマン・ジャパン代表理事、阿部勝太です。

若手こそが立ち上がるべき

東日本大震災の数年前、家業を継ぐために故郷に戻ってきた彼は、サラリーマン時代の生活や収入と、漁師のそれとのギャップに違和感を覚えていました。これだけ働いて、生きるために必要な食べものを提供しているのに、なぜ収入も低く、きつい、汚いと言われないといけないのか。そして、震災で両親の心が折れてしまったことや、地元の親友を津波に奪われたことが彼を奮い立たせたそうです。

「獲ったもの、育てたものがどこへ売られ、誰が食べているのか分からない。でも自分たちがつくっているものは誰にも負けないという自負はある。その良さを、人任せではなく自分たちで押し出していきたい」「親が子どもに『たくさん勉強して、おれの仕事を継ぐな』と諭すような職業にはしたくない。若手が今のうちから、率先して後継者づくりをしていかなければならない」。

話を聞きながら、私は彼や漁師、漁業に引き込まれていました。そして、彼はこう言いました。

「はっきり言って、震災前より今の方が楽しいです。これからも自分たちで企画を立てて進めていきたい」。

復興支援の旗を掲げる民間企業の代表として被災地に飛び込んだ自分にとって、この人たちと「共創」していきたいと思った瞬間でした。

IT企業では、クオーター(3カ月)の目標を設定し、評価をしてきました。そのノリで、すぐにでも何か始めよう!と提案しましたが……。

「焦ったらダメ。出る杭は打たれます。仲間を着実に増やして時を待ちましょう」 ...

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