徳島県上勝(かみかつ)町で平均年齢70歳の町民が取り組む「葉っぱビジネス」を起点に、地域活性のヒントを探っていくシリーズの4回目です。
2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界に日本料理店が広がり、その数は十万店以上ともいわれています。となると、葉っぱも売れるのでは……という大きな期待をふくらませて、私たちも同年から海外進出の取り組みを開始しました。
まずはパリに行ってみた
ところが、初めに市場調査をしてみると本格的な日本料理店はごくわずかしかなく、ラーメン店などが大半を占めていることが分かりました。それに加えて、食の都パリでは基本的に食べられないものはお皿の上にのせないというのが原則。日本のように目で見て楽しむという文化はないという話でした。マスコミの「日本食、世界に広がる」という追い風は感じましたが、葉っぱビジネスがすぐにパリで成功するかといえば、現実は厳しいのではないかという感触でした。
しかし、現場に行かなければ実際のところは分からないぞと思い、海外視察を開始しました。社員からは「英語も話せないのに、ひとりで大丈夫ですか?」と言われてしまいました(笑)。昔から「この破天荒な性格だからこそ、変化に気づくのだ」というのが信条。まずは、何でも行動して自分の目で確かめることが大切です。ああだこうだと言っても始まらない。すべては現場にヒントがあるので、やってみて初めて分かることがある、というのが私の考え方です。
行ってみたことで、大きな収穫がありました。海外での消費量は少ないと分かったものの、世界で活躍する料理人の方に使っていただいたことにより、逆に国内での反響が大きく広がりました。まさに「ブーメラン効果」と呼べるものですね。特に葉わさびは、敷き葉としての利用しかないと思っていたのが、サラダにして食べるという新たな発見にもつながりました。
映画の話が舞い込む
やってみて初めて分かったことは、海外展開だけではありません。あるとき、一本の電話がかかってきました。「上勝町の『いろどり』の取り組みを映画化したい」というお話でした。いろどりの多様な取り組みが映画になることは長年の夢であり、町のイメージアップに絶好のチャンスだと感じました。「こんなありがたい話は二度とないぞ」と思いつつ、上勝のような小さな町で、映画のロケ地として撮影スタッフなどを受け入れられるのだろうかと不安もありました ...