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米国PRのパラダイムシフト

メディアからコンテンツ制作へ 日本のPR会社の役割は変わるか

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

日本のPR業界は「メディアリレーションズ」偏重から脱することができるか。日米のPR会社比較と海外トレンドから、未来のエージェンシーの役割を提言します。

PR会社といえば、華やかな?厳しい?仕事のイメージがある一方で、まだまだ業界の外の人には謎めいた存在だ。国内と海外で違いはあるのか、企業にとっての上手な活用法とは。今回はその実像や内情に迫ってみよう。

ちなみに通常号は海外のPR事情やトレンドをお届けする連載を担当しており、テーマは自分で決めているのだが「次号ではPR会社の特集をするので、その活用法や国内と海外企業、それぞれの強みや弱みなどについて書けませんか」と編集長から、唐突にお題を与えられ、はたと困り果てた。

かく言う筆者もPR会社に9年間お世話になった身である。だからこそ、「強み」「弱み」だなどと、エラそうに上から目線で言いにくい。しかも、「付き合い方」などと言っても、PRのアウトプットの出来は、「会社」そのものというより、「個人」としてのPRパーソンの資質や力量にかかる比率が非常に大きいので、軽々しくアドバイスするのは難しいなあ、というのが本音なのである。

とはいえ、それでは身もふたもないので、データなどをもとに、できるだけ客観的に比較し、クライアントとPR会社の間のよりよい関係性構築の方策を考えてみたい。

平均給与は約1000万円

7月5日に日本パブリックリレーションズ協会が発表した、日本のPR会社204社を対象とした「PR業実態調査」によると、PR業界全体の売上高は推計1016億円で、初めて1000億円を超えたという。

一方のアメリカのPR会社の収益(売上高総利益)は約52億ドル。日本円で約6000億円となる(PR WEEK Agency Business Report 2017調べ)。アメリカは日本の約6倍にあたり、一人当たりの収益は約21万ドル(約2400万円)に上った(図1)

図1 日米PR業界 売上高比較

※日米で開示できる同一指標がないため、単純比較は難しいがアメリカの場合のレベニュー(売上高総利益)については、この記事に詳しいので参照のこと。

総人員数は2万4658人で、うちトップ50社が2万1437人を雇用している。最大手のエデルマンはアメリカだけで2600人を雇用する規模(全世界に約5800人)だ。

ちなみにPRエージェンシーで働く人々の給与は平均で見ると、イギリスで約800万円、アメリカで約1000万円。一般的に欧米ではエグゼクティブの給与が非常に高いので、それにつられて平均値が上がっている側面もあるが、スタートのポジションから年収500万円以上となっており、全体の給与レベルは総じて、日本よりも高いことが分かる。

残念ながら、日本のPR会社は小規模で、「労働時間は長く、給与は低い」というイメージを持たれているところも少なくない。メディアリレーションズなど差別化の難しいサービスなどに依拠した業容であればあるほど、価格競争の波に飲み込まれ、収益の拡大は容易ではないということになる。

そういった意味で、PR会社そのものも、時代の変化に合わせて進化を遂げていく必要があるということだが、残念ながら、秒速で変化する欧米のPR会社に比べ、日本はまだまだ追いついていないというのが現実だ。

コンテンツ制作が重点業務に

例えば、前述の日本PR協会の調査によると、PR会社の取り扱い上位の業務としてはモニター・クリッピング(84.5%)、パブリシティ企画・実施(82.8%)、マスコミ対応(81.0%)となっている。やはり、従来型のパブリシティ、記者発表会が中心だ(図2) ...

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