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IRの学校

機関投資家に逆取材! 投資先を見極める際の数字の見方とは?

大森慎一(Japan REIT 社長室長)

IR担当者としてスキルアップを目指す東堂は、ある機関投資家のもとへ。「数字力」の向上をテーマに掲げ、機関投資家・バイサイドのアナリストの数字の見方についてインタビューをさせてもらうことになった。

大森:こんにちは松下さん、お世話になります。こちらが東堂さんです。

東堂:今日はよろしくお願いいたします。

松下:ようこそKIMCO INTERNATIONAL(キムコ・インターナショナル)へ。普段はもっぱら取材をする方なので、取材される側にまわると緊張しますね。

大森:ははは、無理言ってすみませんねえ。訪問の趣旨は先般ご案内の通りですが、一度、東堂さんからも説明してもらいます。

東堂:ええっ、はい。私はまだ入社2年目ですが、IR担当として、スキルアップをしたいと思っておりまして、「数字力を強化したい」と考え、本日お伺いした次第です。

数字の変化に注目する

松下:数字力ですね。私は普段、参入障壁や企業理念の浸透度合いなどの非財務面を重視していますので、お役に立てるか分かりませんがよろしくお願いします。

大森:東堂さんに質問を続けてもらおうと思ったけど、緊張が強いようなのでまずは私から。まず、キムコ・インターナショナルさんでは、どういった投資をされているのですか?

松下:当社は2006年設立でシンガポールに本社を置く独立系投資運用会社です。日本株のパフォーマンス追求型の株式投資を行っています。主に日本の年金資金を運用しているので、時間軸のかなり長い投資を行っています。私は、中小型株戦略ファンドを担当しています。

大森:パフォーマンス追求で中小型株というと、まだ、成長途上の企業や埋もれている原石企業を発掘するか、低位に放置されている会社を見つけるか、だと思いますが。

松下:そうですね。お客さまの資産をお守りするという立場なので、割安な会社への分散投資が基本です。ただし、割安であっても当社は「投資活動を通して企業の健全な発展に寄与し、豊かな社会の実現に貢献する」というミッションを掲げていますから、著しく資産効率の悪い企業は除外しています。また中小型領域では、ニッチトップの企業も多くなっています。

大森:なるほど、分かりました。さて、あえて数字を中心に見るのはどういう場面でしょうか?

松下:まず、上場企業全体からのスクリーニングで使いますね。

大森:えっ?上場企業全部ですか?時価総額やセクターなどで絞り込んだ投資ユニバースを持っているわけではないのですか。

松下:はい。定点観測するリストアップ企業に加え、全銘柄を一通りウォッチします。そのために会社四季報は毎号くまなく読みますね。この段階では、業績、PER(株価収益率)、株価などの数字の変化を追って、「当たり」をつける作業になります。

東堂:「当たり」というとどんなところに着目されるのですか?

松下:例えばそうした数字の変化が見られる業界や順位が変化している業界など、まず注目すべき業界・企業を見極めますね。業界動向とは違った独自の動きがある企業にも着目したりします。

業界規模や動向を妄想?

東堂:なるほど、業界動向や同業他社動向をよく質問されるのは、そういうことなんですね。

松下:はい。企業側の方は業界の動向をリアルな肌感覚として持っていると思うので。リアルな肌感覚と俯瞰的な観点をぶつけて、業界動向、将来性、業界内シェアの状況、ニューウェーブの存在などをざっくり把握するイメージですね。

大森:なるほど。業界を俯瞰してから、個別企業のファンダメンタル分析へということですか。

松下:そうですね。ただ、業界といってもニッチ市場の場合も多いですから、確かな根拠のある市場規模が判明していない場合も多いです。そうした場合は、数字を軸に妄想します。

東堂:え?妄想ですか?

松下:変ですか?実は「妄想力」は重要ですよ。想像を膨らませていくイメージです。例えば、お好み焼き市場で考えてみると、外食産業やうどん・蕎麦市場、お好み焼き屋さんの店舗数など分かっている事実を調べていきます。その上で、うどんや蕎麦を10回食べるうちに何回お好み焼きを食べるかなとか、お好み焼き屋さんの店舗数は何店舗あるからとか、いろいろな切り口から数字をはじいて比較していきます。

東堂:フェルミ推定みたいですね。数字の妄想を積み重ねて、確からしい市場規模を推定するということですか。

松下:そんな感じです!

大森:業界規模だと確からしくなるけど、「将来性」だともっと妄想力が発揮されますよね?松下さん個人の好き嫌いで市場の将来性が変わってきたりしませんか?

松下:ははは、そういうところはあるかもしれませんね。まあ、ニッチ企業であっても、業界の状況とそこでの自社の位置付けやわが社でないとできないことは何かを説明できるようにするべきですよね。

大森:そうですね。ニッチ企業は「比べるべき同業他社はない」とか「業界動向には無関係です」という回答をしがちだけれど、やはり少し足りない。

松下:そうそう、代替市場なり「時間の競合」とか「胃袋の競合」とか、想像力を膨らませてくれないと。

東堂:確かにスマホやコンビニなどが競合状況を変えた、とか聞きますね。

松下:で、こうして将来性のある市場のニッチトップ企業・候補企業を見極めた後、投資対象になるかどうかのファンダメンタル分析を行います。基本的には、ビジネスモデルを特定してその現在価値を算出しますが、ここでも数字と妄想力が行き来します ...

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