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米国PRのパラダイムシフト

新任広報担当者は必読!グローバル時代のPRの基礎知識

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。

この4月から新しく広報担当者となった方も多いかもしれない。また、入社されて新人として広報部に配属になる方、PR会社に入社された方、おめでとうございます。今回は、そんな皆さまに、グローバル時代のPRの基礎知識とプロフェッショナルに求められる視点について、おこがましくもアドバイスをさせていただきたい。

広報であって広報でない

皆さんのセクションの部名は多くが「広報部」であり、この雑誌のタイトルも『広報会議』と付いているのに、のっけから物議を醸しそうだが、皆さんのお仕事はもはや広報であって広報でない。なぜなら、広報とは「広く報(しら)せる」、つまり「官公庁・企業・各種団体などが、施策や業務内容などを広く一般の人に知らせること」(大辞泉)であり、マスメディアなどを通じて、一方的に情報を発信するという意味合いが強いからだ(図1)。



[図1] アナログ時代のコミュニケーション活動



こうした一方通行の「広報」とは、日本独自の言葉であり、グローバルに使われるPR(パブリックリレーションズ)とは一致しない。アメリカにおけるパブリックリレーションズも、かつてはパブリシティ(メディア露出)という意味合いが強いものだったが、2012年、PRSA(アメリカPR協会)は投票の末、新たに「PRとは、組織と、とりまくパブリック(市民、大衆、国民)の間に相互に利益のある関係を築くための戦略的コミュニケーションのプロセス」との定義を採用した。

PRは「タダ」ではない

一方的に「知らせる」のは広告も同じだが、広告が有料であるのに対し、広報はメディアを通じて「タダ」で取りあげてもらうもの、という理解もあるだろう。だから広告費には何億円を投じても、広報部の予算は人件費と広告費の何百分の一でスズメの涙ほどの予算のみ、といった会社も非常に多い。PRを狭義の広報、すなわちメディアリレーションズと限定してしまえば、確かにそう捉えられるかもしれない。しかし、PRの領域はそれよりもはるかに広い。

以前に紹介した図だが、PRの領域はPaid(広告)、Earned(記事、番組などのメディア露出やパブリシティ)、Shared(ソーシャルメディア)、Owned(自社サイトやブログなど)の頭文字をとったPESO全体にわたる、これが欧米の考え方だ。従来型の「広報」はPRのほんの一部にすぎず、PRプロフェッショナルの舞台はマルチなプラットフォームに広がっている(図2)。



[図2] 広がりつつあるPRの領域(PESO)



こうしたトレンドの時代背景にあるのは、やはりインターネット、そしてソーシャルメディアの普及だ。これまで、パブリックにリーチする手段を持たなかった企業や組織はメディアという拡声器を通して、自分の伝えたいことを伝えてもらうという手段しか持たなかった。しかし、今は自社サイトやブログを通じて ...

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