新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
社会と企業を結び付けるチャネルとして注目を集めるソーシャルメディア。ステークホルダーとつながる強力なプラットフォームとして、ファンを増やしたり認知度を高めたりと様々なPR効果を発揮できるが、その活用には課題も多い。今回は海外企業の成功事例を参考に、上手な活用法やバズるコンテンツの要件について考えてみたい。
流行りに便乗して拡散
最近、Twitterのハッシュタグ「彼氏とデートなう」「彼女とデートなう」がネット上で大きな話題となった。そもそもは声優の山寺宏一さんが、5月31日、Twitterに「彼氏とデートなう。に使っていいよ」というコメントと共に自分の写真を投稿したことが始まり。
この投稿は20万回以上リツイートされ、その後様々なユーザーが「彼氏・彼女とデートなうに使っていいよ」という一言とともに、いかにも"デート中の相手を撮った"風の写真を次々と投稿。アイドルやタレントまでが次々と参戦、さらに話題は拡大したが、この波に乗る企業も現れた。
トヨタ自動車は、猫が自社の車に乗っている写真とともに、「彼氏とデートにゃう。に使っていいよ」と投稿し、1600回以上リツイートされ、話題になった。京都のMKタクシーも、海辺を走るタクシー運転手の写真を投稿し、900回以上リツイートされた。
このように、ソーシャルメディアはちょっとした機転と工夫で大きな話題に発展する。その拡散力を活かそうと、日本でも多くの企業が活用に乗り出しており、中でもシャープや井村屋、タニタなどがその「攻め」の姿勢を評価されている。アメリカでも、企業が「次世代PRのメインプラットフォーム」としてソーシャルメディアに注ぐ視線は極めて熱く、桁違いの投資と労力が向けられている。
ファンと直接対話で人気に
特に、ピザやハンバーガー、ドリンクなど知名度の高いB to Cブランドでは活用が盛んである。その中でも巧者と名高いのがWendy’s(ウェンディーズ)だ。
アメリカの公式Twitterアカウントでは190万人以上のフォロワーを持ち、一つひとつの投稿に対して型にはまらない応答をしてくるのが魅力。ライバルをユーモアたっぷりにディスったり、斜に構えた絶妙の切り返しが人気を博している。ファン一人ひとりの声を聞き、エンゲージメント(絆)をつくることができるという、ソーシャルメディアの特性を活かした運営もユニークだ。
昨年1月には、ウェンディーズをこよなく愛するおばあちゃんが99歳を迎えるという投稿を受けて、ウェンディーズ公式アカウントの"1日所長"になってもらうという企画を実現。誕生日当日には、ソーシャルメディアの運営チームが彼女のもとを訪問し、寄せられた数々の質問に対して彼女が受け答えする様子をTwitter上でライブ配信した。
リツイート数が世界一に
また、今年4月にはこうした機転がTwitterの記録を打ち破る、という大きな成果となって注目を集めた。発端はネバダ州に住む青年がウェンディーズのTwitterアカウントに「1年分のチキンナゲットを手に入れるためにはいくつのリツイートをゲットすればいいのか」と尋ねたことだった。
それに対してウェンディーズは「1800万」と即答。そこから、この青年は1年分のナゲットを獲得するためにハッシュタグを立ち上げ、リツイートをしてくれるように呼びかけた。
あっという間にその輪は広がり、アメリカの有名な司会者のエレン・デジェネレスがアカデミー賞で多くのセレブリティーと自撮りした写真が記録した300万リツイートを上回る「世界新記録」を打ち立ててしまったのだ。
この偉業に対しウェンディーズは「1800万には届かなかったが、史上最もリツイートされたことで目標が達成されたとみなす」としてナゲット1年分をこの青年にプレゼントすることを決めた。エレン自身もエールを送るなどして盛り上げに一役買い、多くのメディアで取り上げられ、すさまじい量の露出を獲得しファン層の拡大につなげることに成功した。
この成功の秘訣は、ソーシャルメディア担当者の個性を活かし、型にはまらない柔軟な対応を可能にしていることだ ...