有田焼の新市場開拓のために、コラボレーションしたのは「食」。器のつくり手と使い手をつなぎ、新たな価値を創出した取り組みとは。
有田焼は時代の変化とともに、挑戦と革新の連続により400年の伝統を紡いできました。しかし近年、器のつくり手が使い手と直接向き合うことが少なくなり、求められるモノづくりができなくなりつつあることが危惧されています。
有田焼をプロ仕様の食器に
料理の世界では和洋を問わず料理人の表現の幅が広がり、料理を盛る器にもメッセージが強く込められるようになったと言われています。そこで、「食」とのコラボで新たな市場を開拓するべく、プロ仕様の食器を開発する「プロユースプロジェクト」に着手。東京・銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の榎園豊治氏をクリエイティブディレクターに起用し、2014年7月から参加事業者を募集。新たな器づくりに挑戦してきました。
最初に挑戦したのは、「美食の街」と呼ばれるフランスのリヨンで2015年1月に開催された「シラ国際外食産業見本市」です。世界中のトップシェフやホテル・レストランの経営者、バイヤーが集まる場に出展し、継続的な取引にはつながらなかったものの、高い評価を得ることができました。
一方、この出展を通じて誕生した窯元と商社による「ARITA PLUS」という事業者グループをプレーヤーとして、有田焼の世界展開に向けたサプライチェーンの構築にも取り組んできました。そのひとつが、世界5大陸に44店舗のレストランを展開する日本料理シェフの松久信幸氏(通称NOBUさん)の協力を得て、2015年9月から着手したオリジナル食器の開発でした。
2016年2月、イギリスのロンドンにあるレストラン「NOBU LONDON」で現地のプレスやバイヤーを招き、商品発表とプロモーションを展開したところ、すぐに反響がありました。同年4月、イギリスの老舗百貨店・ハロッズで日本の陶磁器として初めて販売されたのです。また、NOBUさんのレストランからもオーダーを受けることができ、東京のほか海外の十数店舗のレストランに利用が広がりつつあります。
器にも焦点を当てるレストラン
次にご紹介するのは、期間限定でオープンし、料理とともに地方に眠る地域資源を発掘して磨き上げ、発信するというプレミアムな野外レストラン「DINING OUT」です。
2012年に新潟県佐渡市から始まり ...