小売・流通は、メーカーにとっては重要な顧客だ。しかし、リテールメディアの登場によってこの関係に複雑性が生まれ、広告事業においては両者が逆の立場となった。とはいえ、メーカーが小売に対してリテールメディアへの想いを伝えることは難しく感じることも多いだろう。本記事では、そんな「メーカーが普段は言えない、リテールメディアにおける小売への想い」をユニリーバで14年、また、グループ傘下のラフラ・ジャパンで代表を務めた木村 元氏が代弁する。
木村氏は2009年にユニリーバに入社。ロンドン本社でのマーケティング担当や2021年7月には、ユニリーバ・グループのプレミアムのスキンケアブランドを扱うラフラ・ジャパンの代表取締役を歴任した経験の持ち主だ。2021年からはBrandismを創業し、toB、toC問わず事業会社のマーケティングの支援に従事している。
国内外で販促やマーケティングを見てきた木村氏。元メーカー企業出身者は、日本でリテールメディアの活用が進まない理由は何だと考えているのか。
まず木村氏が述べたのは、日本国内における小売企業の占有率。つまり、国内には抜群の強さを誇る、いわゆる“一強”の小売・流通企業がいないことだ。リテールメディアを語る上で、米国ウォルマートの存在はよく話題にのぼるが、日本にはそれに匹敵するような企業が存在していない。
この占有率の問題は、媒体社である小売の成長課題として言われるが、出稿主であるメーカーにとってはどのような課題が発生するのか。
「リテールメディアの活用において、最初の目的に挙がるのは製品認知の獲得や売り場に近いメディアゆえの最終購買の後押しとして活用したい場合が多いのではないでしょうか。新商品を発売したとき、大々的なキャンペーンを打つときなどは、さまざまな店頭外での広告活動を行いながらも、店頭内への投資も積極的に行うためです。ただし、数十にものぼる...