ファッションに対する人の趣味嗜好の多様化とそれに対応する生産体制は、余剰在庫という社会課題を生み出した。その問題を解決すべく、三井不動産が挑んだのは新たな服のサイクルを生み出す仕掛けを持つ大型店舗づくりだ。アウトレットとは異なる新たな流通の店舗とは。
ワンフロアに様々な店舗があるようなデザイン。施設のキャラクターである5体の「プトンズ」のオブジェが点在。商品説明のための店員はいない。
店頭に並ぶ前の商品が納められた倉庫は、あえて来店者に見えるかたちに。その前に置かれたソファーは残布を紐で括った素材を組み合わせてつくったアップサイクル品。
商品生産による環境破壊や労働環境、商品の余剰在庫や廃棄処分など、一見華やかなアパレル業界は様々な社会課題を抱えている。
三井不動産は、商業施設の開発・運営を通じ、様々な取引先とコミュニケーションを重ねるなかで、頻繁に話題となる余剰在庫に対し「何かできることはないか」との思いから、2020年5月に社内プロジェクトを開始。
余剰在庫や規格外品を集めたマーケットイベント「PASS THE BATON MARKET」の企画・運営を通じたノウハウがあるスマイルズと、多数の商業施設での店舗運営の実績がある双日インフィニティをストアパートナーに選択。2023年6月8日、それぞれの強みを重ね合わせた今までにないコンセプトの店舗「KISARAZU CONCEPT STORE」を千葉県木更津市にオープンした。
余剰在庫を顧客へ提供する場としてのアウトレットモールは既に日本各地にあり、今回の隣接地にも三井不動産が三井アウトレットパーク 木更津を運営している。しかし、着用できる規格外品やデッドストック品はまだまだ世の中に存在する。今回の出店では、それらの商品を再編集することで、来店客を新たな買い物体験へと導くことを目指した。
今回の新たな試みのひとつが、大人は300円の店舗入場料が発生する点だ。この入場料と売り上げの一部は、衣類を肥料や環境負荷の少ない燃料などにリサイクルする取り組みの推進や、その技術研究を行う企業や団体の活動への支援に使われる。商品を販売する店舗の入店が有償というのは珍しい試みだが、ファッションのテーマパークをうたっている効果もあってか、当初の予想よりも受け入れられているという。
空間のコンセプトは「RELIGHT and DELIGHT」。倉庫のような建物の南側から、迷路のように矢印に従って進むなかでも、隣のゾーンを見通せないようにしたり、高低差をつくるなどエリアごとにアクセントをつけた。エリアはゆるやかなテーマで区切り、ブランドではなく、ファッションのテイストやカラートーンなどで分類。近年タウンウェアに近いデザインになっているゴルフウェアを、ゴルフの関連商品とカテゴライズせずに並べるなど、ターゲット外の人にもブランドやジャンルの先入観なしに商品と出会う機会を創出。...
