社会情勢や居住環境の変化、デジタルの普及など様々な理由で企業は直営店舗の数を絞り込む傾向にある。こうした中、ドイツのプレミアム家電ブランド・ミーレが日本国内で5店目となる直営店を日比谷にオープン。食にこだわった体験を提供する新店舗出店に至った戦略とは。

ビルトイン家電の魅力とミーレの家電の性能を体験できるようワンフロアのなかに3種のランドリー機器、食器洗い機、6種の調理機器、コーヒーマシン、冷蔵庫をスマートに展示。
リアル店舗の数を絞り込み、サービス対応の多くをオンライン化する流れは小売に限らず、JRのみどりの窓口など様々な業態で加速している。しかし、自社業態の特性によっては店舗数削減やオンライン化へのシフトが必ずしも必要とは限らない。
ドイツのプレミアム家電ブランド・ミーレは、2022年3月の大阪・本町に続き、23年3月16日に日本国内5店目となる直営店「Miele Experience Center 日比谷」をオープンした。
この名称は世界各国にあるミーレの直営店での統一名称で、ブランドの世界観のもと製品を体験できる場所として本国のデザインチームが店舗を設計。
ミーレの製品の多くは20年の使用を想定して設計されており、デザインを共通化することで生産体制を集約、かつユーザーサポートも長く行うなど、サステナブルな商品開発を行ってきた。その魅力をさらに周知するためには、実際に動かして「体験」してもらう場が必要となる。
東京都内にはすでに目黒、表参道と2店舗あるが、この2店が最寄り駅から少し距離があるのに対し、今回は東京メトロ日比谷駅出口直結、さらに、東京ミッドタウン日比谷の隣という終日人通りが多いエリアの路面店を選択した。通勤や買い物、観劇の延長線上にある場所に出店することで、たまたま通りがかったなどミーレを知らない人へのタッチポイントを増やし、実際に体感して興味を持ってもらう機会を作っていく。
ミーレ・ジャパン マーケティング部の酒井葉子氏によると、昨年日本上陸30周年を迎えたが、この10年の売上の年平均成長率は2桁を達成。また、無駄がなく効率的に空間を使えるとビルトイン(造り付け)家電の需要が高まっているという。
「日本上陸当初は海外生活の経験者やオーダーメイドキッチンを通して購入いただく層など、ユーザー層は一部の方に限られていました。ブランドが広く知られ、取引先も増え、ユーザーの方からの製品の評判も広まりました。特にこの数年では、国内キッチンメーカーとの取引を強化し、当社商品が日本のキッチンにも適したサイズだという理解が広まっています」(酒井氏)。
近年、暮らしの中心の場としてキッチンへのこだわりを持つ人が非常に増え、製品単体としてではなく、凹凸の無いすっきりと美しい空間を実現できるビルトイン機器への関心の高まりも背景にあるという。
また、コロナ禍で「自宅をより快適な空間へ」という考え方が...