顧客に寄り添う店舗づくりを進めるために、AIの活用はどのように役立つのでしょうか。現在、小売店舗でAIの技術が来店客の詳細な購買行動の分析などに活用されています。価値ある売り場づくりやパーソナライズされた消費体験の実現に貢献するAI導入に必要な要点を聞いてきました。
AIが導く実店舗の新たな可能性
店舗スタッフの人手不足や、顧客のオンラインショッピングの機会も増え、店舗では専門知識を持っている人材も求められています。そのような課題をカバーする方法のひとつとして、最近はAIを活用した行動分析技術も登場していると聞きました。実際、店舗で活用できるものはあるのでしょうか?
遠藤氏:これまで実店舗では、「買った」「買わなかった」という購買結果からの分析はできたものの、「なぜ買ったのか」「どの商品と比較したのか」と、ユーザーが購買に至るまでの行動分析が困難でした。
そこで、AIを搭載したカメラが購買前の行動データを収集・分析することで、顧客の心理を推察する技術が開発されました。実店舗における人手不足や、購買行動の詳細な分析を課題としていたビジネス的なニーズと、AI技術の活用が掛け合わさったことで、実現できているのです。
顧客体験向上への一歩
AIによる店舗改善
AIを活用した行動分析技術は、店舗の人手不足の課題をどう解消するのでしょうか?
遠藤氏:消費者の店内行動を分析する技術には、「Actlyzer(アクトライザー)」などがあります。行動認識AIを活用して、人間の行動を分析するものです。「歩く」「手を挙げる」といった、約100種類の人の基本動作を事前に学習しているため、それらの動作の組み合わせから消費者の行動を推定することが可能です。このように、人間の複雑な行動も認識することができるようになっています。
例えば、実店舗では、店内映像から顧客の行動を特定し、周囲の人との関係性や、商品を手に取って戻したなど、商品に対する関係性を認識し、分析することができます。
分析したデータからは、最適な商品の配置や売り場の改善などを行うことで、顧客体験の...