EC化が進まないといわれて久しい食料品カテゴリー。本稿では、その要因分析と現状、打開策についてまとめている。食料品カテゴリーの担当者は、どうすればECモールでの売上につながる運用ができるのか。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」も担当した、大和総研の五十嵐陽一氏が解説する。
日本において、電子商取引(EC)が本格的に始まったのは1990年代後半といわれています。そこから市場規模は年々拡大し、2022年の経済産業省の発表によると2021年の国内物販系BtoC-EC市場規模は13兆2865億円、EC化率は8.78%となっています。2020年には緊急事態宣言が発出され、外出自粛が広がったことから「巣ごもり需要」としてEC利用が急拡大しました。2021年で外出機会が回復したものの、EC利用が消費者の間で定着しつつあることから、BtoC-EC市場規模の拡大傾向は現在も続いています。
また、2021年において最も市場規模の大きいカテゴリーは食品・飲料・酒類(約2兆5000億円)ですが、当カテゴリーのEC化率は3.77%。国内物販系分野全体のEC化率8.78%と比べると低い水準にとどまっています(図1)。
食品分野のEC化率が低い要因
食品分野のEC化率が低い要因として以下の3点が挙げられます。
❶ 商品単価が低い割にコストが高く利益が出しにくい
一般的に、食品分野の商品単価は家電、衣服などのカテゴリーと比べて低い傾向にあります。その一方で、在庫管理、受注管理、配送、アフターフォローなど注文が入ったあとの業務において、他のカテゴリーに比べコスト高となることも少なくありません。例えば在庫管理では、賞味・消費期限を踏まえた管理を行うため、商品ごとに異なる温度帯別の管理をすることが求められ、コストが高くなってしまうのです。
また天候で生産数が変動しやすい生鮮食品においては、入荷数に合わせた価格調整や受注管理が欠かせません。さらに、倉庫や実店舗の商品をピッキングして配送する場合、そのための費用も必要な上、配送中も一定温度に保つ費用が加算されることもあります。このように、商品単価が低い割に高い発生コストが食品のECシフトを阻む第1の要因となっています。
❷ 手に取って確認したいという消費者のニーズが強い
食品は実物を見て購入を判断したいという消費者のニーズが強いようです。実際、米国における「オンラインで食品を購入しない理由...