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米国リテールの今とこれから、日本は現地から何を学べるのか

激動の時代を生きる小売業界 どう突破していくのか

西 湧太(電通デジタル)

日本国内でもリテール領域のDX化の動きが著しくなっている。コロナ禍が明け、本格的に海外視察を再始動する小売・流通企業も多いのではないだろうか。本記事では、リテールDXの最先端をゆく米国事情をレポート。電通デジタルの西湧太氏がNRF2023年のポイントから、リセール市場の隆盛、D2Cビジネスの変化などを網羅的に解説する。

激動の時代を生きる小売業界
どう突破していくのか

パンデミック以降、本格的に経済活動が再開され様々な期待感に溢れていた2022年初頭。しかし、世界の小売業界はエネルギー・原材料価格高騰、サプライチェーンの混乱、人材不足・人件費高騰、インフレなど、様々な課題に直面した。今年1月に開催されたNRF(全米小売業協会)が開催する世界最大規模の小売の祭典「NRF 2023 Retail‘s Big Show」のテーマ “Breakthrough(突破)”が象徴しているように、激動の時代をどのように突破するのか。米国のリテールの現在地とそこから日本が学べるヒントをお伝えする。

大手小売のリテールDXは普及が進み洗練化へ

米国ではパンデミックを期に、大手企業を中心にリテールDXが加速。現在では店舗在庫状況をアプリで確認した上で注文し、店頭で受け取るBOPIS(Buy Online Pick up In Store)や、注文後の当日数時間以内の配送はカスタマーにとって当たり前の選択肢となった。これらはウォルマートやホールフーズなど大手スーパーのみならず、CVS、アルタビューティといったドラッグストアやビューティ専門店、メイシーズやノードストロームといった大手老舗百貨店に至るまで導入されている。

ウォルマートはドローンを活用した配送を既に2021年から始めており、NRF 2023のセッションの中でさらなる配送網の拡大と、配送だけでなく返品まで対応するドローン活用の未来について語っている。

一方、アマゾンドットコムが展開する完全無人店舗の「アマゾンGO」は、最近こそ一部店舗閉鎖の発表もあるものの、テクノロジーの洗練化が一層進んでいる。店内のAIカメラによる認証技術の高精度化やアマゾン独自のレジレスシステム「Just Go Out」は、今後手のひらだけで入店・退店・決済に対応するという。実際にNRF2023の会場にはデモがあり、極めてフリクションレスな体験であった。

アマゾンドットコムのNRFの展示(撮影:筆者)

生活者の変化を背景にビジネスはどう変わったか

気候変動のリスクを背景にした「サステナビリティ」は経営指針の中に当たり前に取り入れられるキーワードとなった。そんな中、ビジネスとして大変化が起きているのがリセール(中古品)市場だ。

まず、生活者側のインサイトが大きく変化している。31カ国約3万人に実施したグローブスキャン社の調査によると*1、10人に8人が「ものを買うときにサステナビリティを意識する」と回答した。さらに、中古品に対する価値観として「安いものを買う」手段としている層に加え、Z世代やミレニアル世代を中心に「素敵な一点ものと出会う」手段と捉えているのが特徴だ。

*1 グローブスキャン社「Healthy & Sustainable Living」

一昔前ではハイブランドへの入口は新品の財布や化粧品であったが、現在では中古品のバッグや洋服をエントリーとして買い、そしてそれをまた売って買い替える前提で次の商品を購入していくのだ。それに対応するように成長する中古品市場の特徴として、リセールプラットフォーマーと呼ばれる新たな業態・業種がリセール市場に参入している....

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