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マーケティングの「禁じ手」十手

『つい、トレンドを追いかける』〜『企画の通りやすさ』の圧力

國田圭作(嘉悦大学)

今回は、トレンドに追随するタイプの企画の是非について考察してみます。トレンドは、その流れに乗ろうとするプレーヤーが増えることで、転がる雪だるまのように勢いを増していきます。この勢いに追随すべきか、あえて無視すべきか。これは非常に難しい判断です。

プランナーの独断で企画を決定できるケースは、一般の企業では稀で、企画会議での審議、上司やトップの了解が必要になります。プランナーとしては、まず社内で通らなければその企画は世に出ないわけですから、企画自体の良し悪しとは別に「社内で通る企画」であることが前提条件になります。大ヒットした『ハリーポッター』シリーズが世に出る前に、12の出版社※1に出版を断られたというのは有名な話ですが、通常そこまで一つのアイデアで頑張る余裕はなく、諦めて違う企画を考えるはずです。

※1 8社という説もある

では、「社内会議を通りやすい企画」とは、どのようなものでしょうか。これは、業界や企業文化によって異なるのですが、作品の独自性・創造性を重視する文化では、少しでも「どこかで見たような=既視感のある企画」は没になりやすい傾向があります。出版などコンテンツの販売量を重視する企業は、むしろ意図的にトレンドに追随する場合がありますが、実はこれは理にかなっているのです。

人は同じ情報に何回も触れるとその情報を処理するのが流暢になり、快感を覚えるようになります。そのときに、その快感を対象(コンテンツや商品)に対する好感と勘違いしてしまうのです(ザイアンス効果※2)。

※2 単純接触効果ともいう

また見終わるまで価値の評価ができないコンテンツは、購買リスクが存在し、「他で見たことがある」類似性は安心感につながります。『XXが○割』といった類似のタイトルに手が伸びやすいのは、こうした消費者心理があるためです。このような心理を理解している企業ほど、社内では「トレンドに乗った企画」の方が通りやすくなります(図1)

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