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マーケティングの「禁じ手」十手

『送り手が先に飽きてしまう』〜『路線変更』のわな

國田圭作(嘉悦大学)

今回は、“禁じ手”の中でも根深い問題である「路線変更」について、指摘してみたいと思います。企業が現状の路線を変更する場合、その変化の度合いについて思慮が足りないと大きなリスクにつながるためです。

まず、人は「飽きる」生き物である、ということを前提にして話を進めたいと思います。皆さんはどうでしょう。飽きっぽいタイプでしょうか?それとも何事にも浮気せず一筋に追求するタイプでしょうか?心理学では「馴化(じゅんか)」といいますが、一定の刺激が続くと人はその刺激に慣れてしまい、関心も低下してしまいます。そのタイミングで新しい刺激に触れると、人はそちらの方に興味が移ってしまうのです。これが「飽き」のメカニズムです。

一方で、認知心理学の研究から、人は情報処理が楽なとき(知覚流暢性といいます)にその対象に好意を感じることがわかっています。情報処理の容易さに対して感じた快感が、対象への好意に転移してしまうのです。ということは、ずっと同じ商品パッケージやCMを見慣れている買い手にとって、それに「飽きる」ことはあったとしても好意は継続している、ということになります。つまり関心が他に移ることはあっても、元々の対象を「嫌いになった」わけではないのです。

男女の別れ話では「私のことが嫌いになったの?」「いや君のことは今でも好きだよ」「じゃあなんであの人と?」というお決まりの問答が繰り返されますが、これは「好き」と「飽き」が同時に発生しうる、わかりやすい証拠です。

認知心理学では実はもうひとつの脳の特性が指摘されています。それは「適度に困難な」情報処理に対して人の注意が...

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