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マーケティングの「禁じ手」十手

「つい削ぎ落としてしまう」〜『白ホリ』の魔力~

國田圭作(嘉悦大学)

今回は、適度な情報量のコントロールについて考察してみます。情報は多すぎても伝わらないのですが、削りすぎても伝わらないという、さじ加減が難しい問題です。

この連載では、顧客(受け手)の認知処理資源が、送り手が思っているよりもかなり不足しているというギャップについて何回か取り上げています。人はだいたい疲れていて余計な思考をしたくないものなので、限界を超えた量の情報はほぼスルーされてしまいます。ですから情報が多すぎるのは完全に“禁じ手”です。では、情報をどこまで絞り込み、単純化すればいいのでしょうか。

よく情報の縮約(単純化)で引き合いに出されるのが茶道に通じる「余白の美」です。利休は秀吉を招いた茶会で、朝顔を一輪だけ花瓶に生け、秀吉が楽しみにしていた庭の満開の朝顔を全て切り落として、秀吉を待ち受けました。茶室自体も、4畳半というミニマリズム建築です。海外でもバウハウスデザインの流れを汲んで「レス イズ モア」、つまり少ないほど雄弁であるという思想が生まれています。デザイナーは、こうした「美学」を学んでいるので、一般的に情報を詰め込むレイアウトを嫌います。

文字を小さくして余白を多く取った美しいレイアウトの画面は、情報量の多さを文字サイズの圧縮でバランスよくさせようとするデザイナーの“苦慮”の結果です。目のいい若い世代には伝わるかもしれませんが、小さい字が読めない、あるいは、読めないものを頑張って読もうとする意欲がないシニアにはほぼ伝わらない表現になります。

実は、利休が削ぎ落とした要素は、茶室という空間全体が五感に訴えかける情報量によって十分にカバーされていました。しかし、紙面の、あるいは画面の余白にはそこまでの豊かな情報量(五感を刺激する力)がないことを認識する必要があります。

とはいえ五感刺激が強ければいいというものでもありません。広告は基本的に...

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