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マーケティングの「禁じ手」十手

「つい、つくりすぎてしまう」〜『顧客志向』のわな〜

國田圭作(嘉悦大学)

今回は、“禁じ手”の中でも収益に大きなマイナスの影響を与える「過剰な在庫/品揃え」について、その背景にある売り手も買い手も気がついていない心理から、考察してみたいと思います。

最近はクリスマスケーキも恵方巻きも、お店が予約受注に力を入れているので、当日に在庫が余って処分に困る、という状態は以前よりは改善されたように思います。近年、環境意識の高まりを受けて、フードロス問題以外にも、アパレルの過剰在庫と大量廃棄も問題とされるようになってきました。循環型の無駄のない社会はいいことです。しかし、そもそも「無駄に過剰につくろう」と思っている担当者なんて、いないはずです。

アパレルであれば「お客さまのため」に色とサイズの組み合わせを全て用意しておこうとすることで幾何級数的に在庫が必要になります。おそらく、生産から販売までのそれぞれの担当者にとっての「顧客志向」の加減がちょっとだけ実需を上回って、それが積もり積もって意図した以上に在庫として積み上がっているのです。「無駄や過剰がよい」と思っていることが原因ならば、それを改めれば問題は解消しますが、おそらく問題の本質はもう少し見えにくいところ、つまり認知バイアスの中にあるのではないかと思います。

過剰在庫の原因、それは「もっと儲けたい」という野心よりも、利益や顧客の信用を失いたくないという不安、恐怖といった潜在意識から来ているのではないかと考えています。人には利益よりも損失が気になるという認知バイアス(損失回避)があります。欠品による機会損失、顧客損失が怖いのです。過剰在庫の裏側には、「安心のために保険をかける」という損失回避バイアスが存在しています。

商品が不足していると...

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