今回は、“禁じ手”どころか普通はとても大事にされている「専門性」について、あえて警鐘を鳴らしたいと思います。なぜ、専門性を立てすぎてはいけないのでしょうか。そこに潜む「わな」を解き明かしていきましょう。
たとえ話として野球とサッカーを思い浮かべてみてください。野球はポジションと役割がきっちり決まっていますね。サッカーも一応、役割は決まっていますが、ディフェンダーもシュートを決めますし、たまにですがゴールキーパーが攻撃に参加することもありますよね。
では、マーケティングの世界はどうでしょうか。筆者の経験では、職種によってかなり守備範囲が決まっていて、普通はその守備範囲を超えて提案をしたり、改善案を出したりといったことはしないもの、という暗黙の了解があるように思います。もちろん、こうした領域主義というのは組織の規模にもよるので、スタートアップのような本当に規模が小さい会社なら、全員で全部を見ないと回らないでしょう。
筆者が見てきたのは比較的大手企業が多いので、どうしても組織が縦割りになり、専門職種のプロフェッショナルが責任を持ってそれぞれのパートを完璧にこなすという分業スタイルが一般的でした。皆さんの会社はいかがでしょうか。
専門性を否定しているのではありません。マーケティングの現場も、他のあらゆる現場と同じで経験値、あるいは経験知が重要になります。マーケティングのように「法則」や「定理」が存在しない分野で、「これが正しいのだ」と上司やクライアントの前で言い切る根拠は、自分の経験値だけだといってもいいかもしれません。経験値を高めるためには、似たような状況の中でたくさん場数を踏むしかないのです。そのために専門職として、専門領域を持っていることが必要になるのですが、問題はその先です。
例えば、あなたがもしCMづくりの専門家だとしたら、そのブランドの販促業務についてどのような...