2020年4月に発売開始したキリンビールの「キリン グリーンズフリー」。そのクオリティの高さが、ノンアルコール飲料未体験層のニーズにもマッチした。ヒットの経緯をマーケティング部の久保育子氏に聞いた。
- 商品名:キリン グリーンズフリー
- 価格:オープン価格
- 累計出荷本数:約1000万本(2020年7月時点 350ml換算)
- 主な販路:スーパー、コンビニエンスストア、大手ECサイトほか
DATA
ビールと同じ主原料で開発
──2020年4月3日に発売を開始した「キリン グリーンズフリー」は1週間で500万本の売り上げを突破しました。開発経緯は。
2009年に世界初のノンアルコール・ビールテイスト飲料「キリン フリー」を発売して以来、この10年間でノンアルコールビール市場は右肩上がりに成長してきました。
ビール市場のユーザーが約5500万人であることに比べてノンアルコールビール市場は約1600万人(インテージSCI〔飲料・ビール類〕2018年10月〜2019年9月 購入者人数)と小さい。新たなカテゴリーとして確立されてきたノンアルコールビール市場ですが、まだ伸びしろがあり、多様化するニーズに応えきれていないという課題がありました。
特にユーザーからは「満足感を得にくい」「味が好みではない」などの消極的な意見が上がり、アルコールを飲まないシーンでもコーヒーやジュースを選ぶユーザーが大半。積極的にノンアルコールビールが選択されていないという背景がありました。
そこでビール代替シーンはもちろん、ランチや女子会、日々の晩酌代わりに誰でも気軽においしく飲める製品を開発することになりました。試行錯誤の末、ノンアルコール・ビールテイスト飲料として初めての自然派製法を採用(特許出願中)。香料や人工甘味料を添加するノンアルコールビールが多い中、ビールと同じ麦・ホップ・水というシンプルな主原料を使い、素材の良さを生かした圧倒的なおいしさを実現できました。
惣菜・常温売場で多場所展開
──どのようなプロモーションを展開しましたか。
テレビCM、ウェブサイトやSNSでのキャンペーン、店頭展開、サンプリングが中心でした。
今回のターゲットはノンアルコールビールの非ユーザー。40代の男女を中心に、「飲まず嫌い」になっている方々に対して「おいしいノンアルコールビールができた」ことを訴求しようと考えました。そこでCMによる告知で認知を取り、合わせて飲用体験を提供することで、「まずは1本トライアルしてもらう」ことを重視しました。
中でも力を入れたのは店頭での多場所展開です。普段アルコールやノンアルコール飲料を飲む習慣のないユーザーは冷蔵飲料コーナーを素通りしてしまいがちです。そこで...